レポート教育最前線

学校運営協議会とNPOの2本立てで家庭・地域が関わる参画型コミュニティ・スクール

東京都連雀学園三鷹市立第四学校

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地域住民や保護者などが学校運営に積極的に参画し、力を合わせてより良い学校を作る「コミュニティ・スクール(CS)」。政府は全ての学校がCSを目指すべきだとの考えを示し、当面の目標である「全公立小・中学校の1割」の達成も目前です。教員にとっても、地域・保護者との日常的な連携・協働が不可欠になっています。CSとして学校経営が行われている連雀学園三鷹市立第四小学校の実践を中心にレポートします。

文・渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

CS指定される前から
ボランティア団体と共に

東京都内の「住みたい街」ランキングで、必ずといっていいほど上位にランクされる東京・吉祥寺地区。吉祥寺駅(武蔵野市)から都民の憩いの地である井の頭恩賜公園沿いを歩いて約15分、三鷹の森ジブリ美術館のすぐ近くに、連雀学園三鷹市立第四小学校はあります。
三鷹市教育委員会は2008年度までに、全小・中学校(22校)をCSにしました。同市の場合、小中一貫校化とセットで導入している点が、大きな特色と言えます。
中でも同校は、学校運営協議会制度の発足から2年が経った2006年10月、別の学区の中学校1校とともに、三鷹市で最も早くCSに指定されました。
それには、前史があります。もともと地域・保護者が教育に関心の高い土地柄の中、1999年度から2004年9月まで校長を務めた貝ノ瀨滋氏(後に三鷹市教育長・教育委員長、中央教育審議会委員、教育再生実行会議委員などを歴任。現在は政策研究大学院大学客員教授・東京家政大学特任教授)が「夢育(むいく)の学び舎(や)」を提唱し、学校支援ボランティア団体「夢育支援ネットワーク」が発足したのが始まりです。この組織は2003年にはNPO法人となり、活動の幅を広げています。
同市教委の小中一貫教育校構想に伴って2008年度、同校のほか第六小学校、南浦小学校、第一中学校と共に「連雀学園」が発足してからは、地域住民・保護者や各校の校長など約20人から成る「連雀学園CS委員会」が、学園全体とともに各校の運営に参画しています。
なお、1中学校と3小学校から成る連雀学園は、三鷹市内の各学園の中で、最大の児童生徒数を誇ります。

 

将来的には全校で
“学校の応援団”に

ここで改めて、CSとはどのようなものかを振り返っておきましょう。
CSは2000年12月、政府の教育改革国民会議が、教育基本法の改正などとともに、「地域が運営に参画する新しいタイプの公立学校(コミュニティ・スクール)」として、地域との連携に強調点を置いた制度を検討するよう提言したのが始まりでした。その後、2004年3月の中央教育審議会答申「今後の学校の管理運営の在り方について」を経て、同年6月に地方教育行政の組織及び運営に関する法律が改正され、各学校は「学校運営協議会」を置くことができるようになりました(第47条の5)。
学校運営協議会は、教育委員会が指定する学校に置かれ、各委員も教育委員会から任命されます。主な役割は、
① 校長の作成する学校運営の基本方針を承認する
② 学校運営に関する意見を教育委員会または校長に述べる
③ 教職員の任用に関して教育委員会に意見を述べる
というものです。
施行直後の2005年4月は6市区の17校で始まり、その後、自治体ぐるみで設置に取り組む事例などが増え、2016年4月現在、2,806校(幼稚園109園、小学校1,819校、中学校835校、義務教育学校7校、高校25校、特別支援学校11校)を数えるまでになりました。その間、第2期教育振興基本計画(2013~17年度)の中に、CSを全公立小・中学校の1割(約3,000校)とする成果目標が盛り込まれましたが、目標達成にあと一歩というところまで来ています。
一方、政府の「教育再生実行会議」は2015年3月の第6次提言で、CSの「仕組みの必置」を検討するよう提言。それを受けた中央教育審議会は、2015年12月の答申「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」で、全ての公立学校が目指すべきだとの考えを示しました。
この答申等の実現を目指して策定された文部科学省の「『次世代の学校・地域』創生プラン」(2016年1月)では、次期学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」を中核として、「チーム学校」を実現するためにも、CSの役割が重要だとしています。
つまり今後、どの教員にとっても、CSなどを通した地域・保護者との連携・協働が、教育課程上も学校運営上も不可欠になる、ということです。
なおCSには、1990年代の学校自由化論の影響を受けて、米国の「チャーター・スクール」(特別認可学校)や、英国の「学校理事会」のような、強い権限や裁量権を持つべきだという流れと、いわゆる学校の「応援団」であるべきだという流れの、2つの流れの狭間で揺れてきた側面があります。
教育改革国民会議の提言時には「日本版チャーター・スクール」などとも呼ばれ、制度的には教員人事にまで意見を述べることが認められるなど、学校理事会的な要素が考慮されていますが、実際に運用されている学校を見ると、後者の「応援団」タイプが圧倒的に多いようです。三鷹市立第四小学校の場合も、成り立ちや指定の経緯から見て、「応援団」タイプの典型である、と言うことができるでしょう。

p129連雀学園CS委員会による討議。保護者や地域住民、学校の教職員等による活発な意見交換が行われています。

 

CS委員会の
活動内容

CSと小中一貫教育をセットで推進する三鷹市では、学校運営協議会組織であるCS委員会が、学園単位で置かれています。三鷹市立第四小学校の場合は、他の1中学・2小学校と合同の「連雀学園CS委員会」が設置されており、学園の委員は各校の委員も兼任する形となっています。
学園のCS委員会には会長・副会長、学園長・副学園長などから成る「CS役員会」の中に、「評価部」「広報部」「サポート部」が置かれています。このうち「評価部」では、小中一貫教育に関するアンケートを学園全体で実施し、分析結果を教育活動に反映させるよう取り組んでいます。
連雀学園の目指す児童生徒像は、「学び続ける人」「共に生きる人」「心と体を鍛える人」です。そのため、研究活動を重視しています。年間7回ある4校合同の学園研究会には、4校の教職員約200人のうち常時150人ほどが集まるといいます。
さらに、連雀学園では、家庭配布用に「連雀『学び』のスタンダード」を作成しています(小学校1・2年生用、同3~6年生用、中学生用の3種類)。これは、「○○家の『学び』のスタンダード」として、生活面、人との関わりの面、学習面のそれぞれについて、家庭で話し合い、目標とその評価を書き込めるシートです。家庭との連携・協働を深めるためのツールとして活用されています。
一方、「サポート部」は、保護者や地域人材を学園各校の教育活動に参画させるサポートと、子供たちの健全育成の企画が、主な役割です。具体的に「子ども熟議」「井の頭公園かんさつ会」などを行っており、年3回の「あいさつ運動」にも重点を置いて活動を進めています。
ただ、連雀学園の場合、市内最大の学園であることから、第四小学校は最も離れた南浦小学校と第一中学校(両校は隣接)まで、歩いて30分かかります。同じ市内の中学校区といっても、地域性は違います。そのため、学園としての一貫性を持たせる一方で、各学校の独自性も尊重しています。そして、三鷹市立第四小学校の「独自性」の象徴的な存在が、学校支援組織「夢育支援ネットワーク」です。

p130_15年生の美術館見学にも、教育ボランティアが同行。児童の学習をサポートします。

 

約150人が登録
授業の価値も高まる

同ネットワークはNPO法人ですので、市内全域の小・中学生を対象としています。事務局は第四小学校内(職員室の隣)に置かれており、「夢育の学び舎=参画型CS」の実践を掲げる同校にとっては、日常の教育活動において欠かせないパートナーとなっています。
同ネットワークが束ねる教育ボランティアには、「コミュニティ・ティーチャー」(CT)、「スタディ・アドバイザー」(SA)、「きらめきボランティア」の3種類があります。
CTは、総合的な学習の時間などにおけるゲストティーチャーに当たりますが、単に遠くの企業関係者などではなく、地域に住み、そのキャリアを生かした方などであるという点がミソです。幸い同校の学区には、そうした人材が豊富です。
SAは授業における学習支援者に当たり、教員と連携しての指導、実技教科での安全管理、校外学習の引率などを行います。ただ、支援内容は単なる授業の手伝いにとどまりません。事前には必ず打ち合わせをして授業のねらいを理解し、事後評価にも加わります。プロである教員の授業力を100として、SAの力20が加わることで、子供たちが120の教育を受け取ることができる。それが、同校の考え方です。
きらめきボランティアは、音楽、スポーツ、生け花など22もの多彩な課外活動「きらめきクラブ」の講師を務めます。これら教育ボランティアには現在、計150人ほどが登録しており、そのほとんどが地域住民や保護者です。

p130_2写真展に出す写真を撮影する5年生の児童。撮影地となる井の頭公園への引率も、教育ボランティアが加わっています。

 

「よく、『CSになって楽になりましたか?』と聞かれますが、とんでもありません。仕事の量は増えています。でも、本校の教員に“多忙感”や“徒労感”はありません。」
同校の喜多村晃校長は、そう話します。理由は、各教員が授業などで充実させたいことが、教育ボランティアの力を借りることで実現できるからです。このことは、見方を変えれば、一人一人の教員には日常的に地域・保護者と連携・協働する力が求められる、ということも意味します。
「次期学習指導要領が掲げる『社会に開かれた教育課程』でも、CSの理念を生かした教育課程を作りたいと思っています。そのためには、研究活動が中核にならなければなりません。地域と融合することで、価値を高める。それが連雀学園の教育です。」(喜多村校長)

p131_1同校が取り組む「アントレプラン」(起業家教育)の一環として、商品づくりに励む6年生。

 

地域の実情に応じて
「社会に開かれ」る必要

喜多村校長は、2008年度に三鷹市の別の小学校に異動する前は(第四小学校は2012年度から)、長く品川区内の小学校に赴任していました。同区が小中一貫教育に取り組んでいる点では三鷹市と同じですが、学校選択制を導入し、CSを指定していない点が、大きな違いです。喜多村校長は、その改革の経緯も、当初から当事者として見てきたと言います。
「三鷹市に赴任した頃は『品川と三鷹と、どっちがいいですか?』と聞かれましたが、比べようがありません。地域が全然違うのですから」と喜多村校長は苦笑します。地域によって学校経営や授業運営を考える、というのは、地域との連携・協働という視点からも、「社会に開かれた教育課程」という点からも重要なことでしょう。
「教育は、学校だけで行っているものではありません。家庭や地域も含めた24時間体制です。その24時間で子供を育てるのがCSなのです。」
そんな時代の学校教育を担う教員には、どのような資質・能力が求められるのでしょうか。喜多村校長は、「広い視野を持たなければ、これからの教育は担えません。授業をするにしても、外部と話をするにしても、自分一人で考えて判断するのではなく、学校の組織や目標を踏まえて行動する必要があります。常に子供を真ん中に置き、保護者や地域と連携することも求められます。もちろん最初からそんな力が備わっている教員はいないので、経験を通じて身に付けることになります。だからこそ、学ぶ姿勢を常に持っていてほしいと思います」とアドバイスします。
地域との連携・協働はもちろん、多様な専門スタッフ等と連携し、学校の教育目標を理解しながらアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)や教科横断・学校種縦断のカリキュラム・マネジメント(カリマネ)に取り組み、「社会に開かれた教育課程」の実現を目指す。そんな教育を担う「学び続ける教員」の養成・採用・研修を行っていく。「『次世代の学校・地域』創生プラン」は、学校教育のこうした姿を構想しているのです。
このプランを実現するために、文部科学省が取り組んでいるのが、教職員定数の戦略的充実とCSの推進加速です。「1割」という目標が達成した後も、CSはさらに広がっていくことでしょう。

p131_2職場体験実習前のリハーサルも教育ボランティアがサポート。

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