編集長コラム

学校から消えたもの 新たに登場したもの

昔と変わらない教室のたたずまい

過去20年を振り返ると、教育制度は大きく様変わりをしました。「総合的な学習の時間」や「外国語活動」が導入され、公立では土曜日の授業が、基本的には行われなくなりました。新しい試みとして「2学期制」や「学校選択制」、「コミュニティ・スクール」などに取り組む学校や地域も出てきています。

一方で、学校に足を運べば、そこには昔と変わらない先生や子供たちの姿があります。授業で“我先に”と挙手する子供たち、運動会で校庭に響き渡る大声援、卒業式を包み込む感動の渦…。そんな場面を見るにつけ、どんなに制度が変わろうとも、教育の本質は何も変わっていないことを痛感させられます。

保護者会や授業参観で、久しぶりに学校へ足を運んだ保護者の多くは、校舎や教室のたたずまいがほとんど変わっていないことに気付きます。黒板、チョーク、机、椅子、教卓、ロッカーなどは、20年前どころか、30年前、40年前と比べても、さほど大きな差はありません。企業のオフィスや飲食店、ショッピングモール等の公共施設と比べても、ハード面における学校の変化は、極めてゆったりとしているように思います。

そんな中でも、過去20年で学校に登場したもの、学校から消え去ったものは少なからずあります。そして、その登場や消滅には、単なる「文明の進化」ではない、学校教育特有の事情が背景にあったりします。具体的に見ていきましょう。

 

学校から消えたもの

その1 座高計
健康診断で、なぜ座高を計るのだろう? そう思ったことのある人は少なくないでしょう。身長に比べて座高が高いことを理由に、「短足!」などとからかわれた人もいると思います。身長や体重は分かるとして、お尻から頭の先までを計ることに、何の意義があるのでしょうか。
日本で座高の計測が始まったのは戦前の1937年。当時は子供の栄養状態が悪かったことから、座高を計ることで、内臓の発達具合を見ていたそうです。その名残で、栄養状態が良くなった戦後も座高の計測は続いていましたが、2014年の制度改正で必須項目から外されました。ただ、座高計自体は、今も保管している学校が多いようです。

 

その2 アルコールランプ
その昔、メラメラと燃えるアルコールランプの火に、恐る恐る横からフタをかぶせて消した思い出を持つ人もいると思います。そんな理科実験用のアルコールランプも、現在はほとんど使われていません。理由は、机の上から落としたり、気化したアルコールが爆発したりといった事故が多いからで、現在はガスバーナーが主流となっています。また、アルコールランプと一緒に使われていた石綿付き金網も、現在はセラミック製のものに換えられています。

 

その3 腰洗い槽
小中学生時代、プールに入る前に、水が張られた階段状の窪みを通った人もいると思います。これは「腰洗い槽」と言い、体を消毒するためのもの。先生に「腰まで浸かるように!」と言われた水には、プールの100倍以上もの塩素が含まれていました。
現在は、そこまで高濃度の塩素で消毒する必要はないということが分かり、使われなくなりました。ただ、撤去するにはお金がかかるため、使わないまま放置している学校が多いようです。最近の小中学生の中には、そんな腰洗い槽を見て,「何だろう?」と不思議に思っている子もいることでしょう。

その他に、名札やチャイム、連絡網なども、「学校から消えたもの」として挙げられることがありますが、実際には今でも多くの学校が使っています。ただ、安全面などへの配慮から、いずれは消えてなくなる時代が来るのかもしれません。

 

新たに登場したもの

その1 さすまた
「さすまた」と聞いても、どんな物かよく分からない人もいると思います。漢字で書くと「刺又」。2〜3メートルの棒の先にU字型の金具が付いた物です。江戸時代から、相手の動きを封じ込める武具として使われていたものですが、現在は不審者侵入時の防犯用具として、多くの学校に置かれています。
これが普及するきっかけとなったのは、2001年に起きた池田小学校事件です。以降、学校では防災訓練だけでなく、防犯訓練も頻繁に行われるようになり、複数の先生がさすまたを使って侵入者を捕らえる練習などが行われています。
p139不審者を捕らえる防具である「さすまた」。多くの学校に設置されている。

 

その2 AED
日本語では「自動体外式除細動器」と呼ばれ、2000年代に入ってから、一般の人でも使用できるよう規制が緩和されたため、公共施設等への設置が広がりました。学校にも急速に普及が進み、現在は9割以上の学校に設置されています。
なお、AEDについては、「実際に使うのは怖い」という人もいますが、電気ショックを与えるかどうかは、人に取り付けた後、機械が心電図を分析して判断してくれるので心配はいりません。使用方法も、機械が音声で案内してくれるので、安心して使うことができます。

 

その3 ICT機器
学校にパソコンが普及し始めたのは2000年頃からで、パソコン(コンピュータ)室などが設置されるようになりました。その後、電子黒板、デジタル教科書、タブレット等も登場し始めましたが、その変化自体は比較的緩やかです。文部科学省の調査によると、電子黒板のある学校の比率は78%に上りますが、教室単位で見れば21.9%にとどまっています。考えてみたら、“黒板+チョーク”での授業スタイルが100年以上も続いてきたわけですから、 これを変えるのは容易ではないのでしょう。

 

今後も、さまざまなものが登場し、消えてゆくものと思われますが、教師と子供たちの深い関係性は、変わらずにいてほしいな…と思う次第です。

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