編集長コラム

問題行動に対する警察通報 「学校の恥」は時代遅れ!?

あるテレビ番組での激論

先日、あるテレビ番組で、2人の教育評論家を中心に討論が繰り広げられていました。テーマは「学校における警察通報の是非」。生徒が問題を起こした際、学校が警察に通報するのは「あり」か「なし」かについてです。
「あり」と主張する側は、次のような理由を述べていました。

○教員だけでは、到底手に負えないケースがある。
○警察通報の可能性があるという事実が、問題行動の抑止力につながる。
○いじめや暴力は犯罪行為そのもの。学校内だけが警察の管轄外というのはおかしい。

 

一方、「なし」と主張する側は、次のような理由を述べていました。

○警察に通報すると、問題を起こした本人だけでなく、周囲も含めて影響が大きすぎる。
○警察に通報したとしても、根本的な問題の解決にはならず、児童生徒の成長にとってもマイナス。
○そもそも警察への通報は、学校の教育的責任を放棄しているようなもの。

 

こうして見ると、どちらの主張も一理あるように思えます。
番組視聴者へのアンケートでは、約8割の人が「あり」と回答をしていました。もし、この調査を20年前に実施していたら、数字は逆転していたのではないかと思います。
その昔、校内暴力の嵐が吹き荒れていた時代、多くの学校は警察の手を借りず、教職員だけの力で問題を解決しようとしていました。「警察への通報は学校の恥。」そう豪語する先生もいました。良いか悪いかは別として、現在はそんなことを言う先生は少なくなったように思います。

 

学校の警察通報に対する国の方針

児童生徒の問題行動に対し、学校と警察が連携して対処することを「あり」とする方針は、国レベルでも示されています。例えば、「いじめ」については、状況が深刻で犯罪行為として認められるような場合は「ためらうことなく早期に警察に相談し、警察と連携した対応を取ることが重要」と記した通知が、文部科学省から出されています。
また、大阪市のように、児童生徒の問題行動をレベル分けし、「レベル4以上は警察に通報」といった形で、対応方針をマニュアル化している自治体もあります。こうして見ても、警察への通報を「学校の恥」とする文化は、薄れてきていることが分かります。
もちろん、「警察への通報」は最終手段であり、可能な限り学校内で対処するのが望ましい点は、以前と変わりありません。ただ、学校単独での対応に限界が見え始めているのも事実です。
かつての学園ドラマのように、先生と生徒がぶつかり合った末に和解し、深い絆で結ばれる…なんて話になれば素晴らしいですが、現代社会はそんなストーリーで語れるほど単純ではありません。児童生徒の多様化、保護者の価値観の変化、スマホやネット普及などにより、児童生徒の問題行動も複雑化しています。そうした状況で、学校が「自分たちだけの力で何とかせねば」と頑張りすぎると、問題がこじれて不幸な結末を招くこともあるでしょう。
学校には「他者の力を借りるのは恥」と考える文化が少なからずあります。そのため、担任する学級で何かトラブルが起きても、周囲に相談せず、独力で解決しようとする人が少なくありません。その結果、問題を一人で抱え込み、心の病にかかって退職を余儀なくされる若い教員もいます。夢と希望を持って教師になったというのに、実にもったいない話です。
「警察との連携」という方針には、そうした学校文化に風穴を空ける意味合いもあります。学校内で情報を共有し、必要に応じて周囲の機関と連携・協力する文化が浸透すれば、いじめの隠ぺいなども減少するに違いありません。

 

聖域たる学校は治外法権?

そもそも、学校内で起きる「暴力」や「器物損壊」を、学校内だからといって、「いじめ」や「体罰」で片づけてよいのかと主張する人もいます。確かに、校門の外側で行われれば違法なのに、内側で行われれば合法というのは、おかしな話です。
過去のいじめ自殺事件では、目を疑うような残虐行為が行われていました。集団での暴行、金品の要求、所持品の破壊…。いずれも、一般社会で大人が行えば、明白な犯罪です。学校だけが治外法権というのは、教育を特別視し過ぎるがゆえの弊害との見方もできるでしょう。
この点について、国立教育政策研究所が「学校と警察等との連携」というリーフの中で、興味深い見解を示しています。加害者の行為を止め、被害者を守るという点で、「被害届」の提出が学校・警察間の連携を進めていく上での鍵になるというのです。
「被害届」は、犯罪に遭ったと考える者が、その事実を警察に申告する書類です。これが受理されれば、警察は捜査に乗り出します。そして、刑法に基づく対応が、粛々と進められることになります(下の表を参照)。
これまで、児童生徒の問題行動に対しては、「退学」や「停学」、「出席停止」など、教育法に基づく対応が行われてきました。ここに、刑法という一般法を持ち込むべきではないとの主張もあるでしょう。しかし、その考え方は学校教育を聖域とみなし、体罰などを容認することにもつながりかねません。
もちろん、警察への安易な通報が常態化すれば、教育活動が滞る可能性はあるでしょう。その点は十分に踏まえつつ、「被害届」の提出を含め、警察との連携をオプションとして持っておくことは、決してマイナスにはならないはずです。そして、若手の先生は、学級で何か問題が起きた時、一人で抱え込まず、周囲に相談するマインドを持っていてほしいと思います。

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