学校不祥事の顛末

LINEで私的な連絡を取り、不適切な行為を働く

【今月の事例】
LINEで私的な連絡を取り、不適切な行為を働く
A県教育委員会は、自分が勤務する学校の女子生徒に不適切な行為を働いたとして、県立高の男性教諭(27)を同日付で懲戒免職処分にした。県教委によると、部活の顧問をしていた県立高教諭は無料通話アプリ「LINE(ライン)」を活用して女子生徒に私的な連絡を行い、複数回、勤務校の教室内で生徒を抱きしめ、口にキスした。県教委の事情聴取に対し、教諭は「好意を抱いていた」と話しているという。
県教委によると、教諭が連絡手段として生徒のLINEのIDを取得する際には、学校長の許可が必要だが、県立高教諭は「面倒くさい」と申請していなかった。

 

【法律家の眼】

後を絶たない教員のわいせつ事案
どのような行為にどのような処分が科されるのか

弁護士 樋口 千鶴(上條・鶴巻法律事務所/東京都教育委員会公益通報弁護士窓口)

1 厳罰化の傾向

(1)本事案の特徴
残念ながら、教員によるわいせつ事案は後を絶ちません。不祥事が発覚すると、当該教員は処分をされ、そうした処分は公表されます。それでもなお卑劣なわいせつ事案がなくならないのはなぜなのか、今一度、立ち止まって考える必要があるのではないでしょうか。本事例は、無料通話アプリ「LINE(ライン)」により、教員と生徒が直接連絡をとっていることが特徴的と言えます。そのことを踏まえ、以下、問題点を検討していきましょう。

(2)処分量定の例
わいせつ事案に関する処分は、厳罰化の傾向にあります。東京都では「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」(平成28年4月1日更新)を公表しています(東京都Webサイト参照)。その中から、児童生徒に対する性的行為等に関する処分量定を抜粋してご紹介します。

ア 性行為そのもの、あるいは性器等に直接触れる行為等
□ 同意の有無を問わず、性行為を行った場合(未遂を含む。)
□ 同意の有無を問わず、直接陰部、乳房、でん部等を触わる、又はキスをした場合
→免職

これらの行為は、強姦罪や強制わいせつ罪に当たり得る行為です。その悪質性から、同意の有無を一切問わず、最も重い免職処分が相当とされているのは当然と言えるでしょう。

イ 性的行為と受け取られる行為
□ 性的行為と受け取られる直接身体に触れる行為(マッサージ、薬品の塗布、テーピング等を行う際の行為も含む。)を行った場合
□ 性的行為と受け取られる着衣の上から身体に触れる行為を行った場合
→免職、停職

これらの行為が例示されているのは、「部活動の指導として」とか、「正当な治療と称して」卑劣なわいせつ行為が行われる例が見られることへの強い警鐘と見るべきでしょう。性的行為と受け取るかどうかは相手の内心の問題ですから、そう受け取られるような行為なのかは、客観的事情から判断されることになります。

ウ わいせつメール等による性的行為の誘導等
□ わいせつな内容のメール送信、電話等又はメール等で性的行為の誘導、誘惑を行った場合
→免職、停職

「メールをしただけで…」とお思いになるかもしれませんが、わいせつ行為に至らなくても、免職や停職といった重い処分が相当とされています。

エ 性的な言動により性的不快感を与える行為
□ 性的な冗談・からかい・食事、デートへの執ような誘い等の言動を行い、性的不快感を与えた場合
→減給、戒告

2 LINEによる関係性の変容

携帯電話、スマートフォンの普及に伴い、生徒との連絡手段としてLINEのIDを取得する例があります。たとえ当初は連絡目的であったとしても、生徒と個人的にやりとりを続けるうち、次第にタガが外れ、恋愛感情を伝えたり、わいせつ行為へ誘ったりなど服務事故へ発展するケースが増加しています。本事案は、まさに最近のそうした傾向を示すものです。

3 何を自覚すべきか

不祥事があると、教員として自覚を持つべきと抽象的に言われますが、漠然とではなく、「何を」自覚すべきなのかを具体的に考えることが重要だと思います。
例えば、教員と生徒には上下関係があること、生徒は未だ人格形成の途上にあり判断能力が未熟であること、生徒が不適切な誘いに対し的確な判断を下したり行動したりするのは難しいこと、生徒は不適切な関係について周囲に相談できないことなど、自分なりにいろいろと考えてみてください。
LINEの利用で自分の立場を忘れ処分された事例を他人事と思わず、いつ誰に見られても恥ずかしくない教師を目指していただきたいと思います。

【教育者の眼】

「嫌だ」と言えない児童生徒の
弱みに付け込む卑劣な行為

濱本 一(共栄大学教授/前埼玉県教育局市町村支援部長)

本事例のように、LINE等でのやり取りをきっかけに、不適切な行為に及ぶ教員が増えています。最近は、若手教員にとどまらず、指導力の高いベテラン教員においてもこうした事件を起こすケースが少なくありません。教育に関わる者としては、こうした事件が起こるたびに、怒りとともに虚しさを覚えます。

■教育者としての使命感や自覚はどこへ

どの教師も児童生徒の前に初めて立ったとき、強い使命感と自覚、情熱を持ち、全力を尽くす志を持っていたはずです。こうした事件を聞くと、その“初心”はどこへ行ったのかと問いたくなります。
教師は児童生徒一人一人にとってかけがえのない存在です。良き社会人として教え導く存在であり、児童生徒の“範”でいなければいけません。事件の成り行きは当事者にしか分かりませんが、被害にあった生徒が受けた将来への影響、保護者や地域の方々の怒りや不信感、他の教師や学校に与えた影響を考えれば、決して許されることではありません。
学校現場においては、日々の指導等への“慣れ”や“おごり”、“思い上がり”が、初任時の“自覚と使命感”を希薄にしてしまうことが少なくありません。本事例において、校長の許可が必要だったにもかかわらず、「面倒くさい」という理由でそれを怠っていたことを見ても、そうした“慣れ”があったものと思われます。この教諭の行為は、「信用失墜行為の禁止」に抵触するだけでなく、「上司の職務上の命令に従う義務」にも違反しており、懲戒免職処分は致し方ないところと言えます。こうした身勝手な教員がいると、「チーム学校」としての指導体制も崩壊させてしまいかねません。
教師には、研修(研究と修養)に励むことが義務づけられています(教育基本法第9条、教育公務員特例法第21条)。崇高なる使命を自覚するとともに、学校という組織の一員であることを意識することが求められます。

■“立場”を利用して“弱み”につけ込む

学校においては、部活動などで一斉に連絡を取る際、メールやLINE等のアプリを活用すると便利なのは確かです。実際に、そうした活用が広がっている側面もあるでしょう。しかし、そうした利用の延長線に、教師・生徒間での私的なやり取りが生じ、1対1での交流が生まれ、個人的な感情が生まれることもあります。
教師が好意を抱き、言い寄った場合、生徒は断ったり、拒んだりしにくい側面があります。教師は指導する立場、生徒は指導される立場ですから、生徒は「嫌なこと」であっても「従わなければならない」という気持ちがどこかにあります。そうした立場を利用して、教師が一方的に言い寄り、生徒が誰にも相談できず悩み続けるケースは少なくありません。事態が発覚するのは、生徒が勇気をもって親や友人、他の教師に相談したときですが、そこに至るまでにどれだけ悩んだかは計り知れません。

■LINEでの私的連絡を禁止する自治体も

LINEなどコミュニケーションツールの普及により、周囲からは見えない教師・児童生徒間の関係性が生じるようになりました。そうした状況を踏まえ、自治体の中にはこうしたツールを利用した私的な連絡を禁じている所も出てきています。
いずれにせよ、教師を目指す皆さんは、“自覚”と“使命感”をいつまでも忘れず、肝に銘じてほしいと思います。

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