教師の本棚

『雷電本紀』

P135

飯嶋 和一=著
2005年/小学館文庫
¥695+税

伝説の大関“雷電”の人となりを描いた傑作

丸山 匠勇(東京都板橋区立西台中学校教諭)

飯嶋和一にハズレなし。今回、飯嶋さんの本を紹介するのに、一体どの本にしたら読者の皆さんに喜んでもらえるのか、迷いに迷いました。何故かって? それはどれも面白く、ためになるからです。もしかすると、もうそんなことは知っているよ、という方もいらっしゃるとは思いますが、まだ読んだことがないという幸せなあなたに、何冊か飯嶋さんの著作をご紹介いたします。

私が読んだ順番にいくと、『始祖鳥記』、『雷電本紀』、『黄金旋風』(長崎御朱印貿易家の話)、『出星前夜』(島原キリシタン蜂起の話)、『狗賓童子の島』(流刑地隠岐の話〜現在読書中)となりますが、どれも日本歴史小説の金字塔ともいうべき本です。なんといっても綿密な取材に裏付けられた膨大な知識と、繊細な心情の描写が見事に融合していて、読み始めると止まりません。どれも厚い本なので、他のことが手につかなくなって困ってしまいそうです。

この中で今回紹介するのが『雷電本紀』。少しでも相撲に興味がある方なら、強すぎて横綱に推挙されなかった大関、雷電為右衛門のことはご存じかもしれません。しかし、その雷電が実は人に優しく、それゆえに当時(天明・寛政年間)、凶作や飢餓、貧困にあえいでいた民衆に生きる希望を与えていった、ということまでは知らない人も多いと思います。この本は、スポーツ小説としてだけではなく、民衆の立場から雷電を描いた歴史小説としても、出色の出来栄えです。強い力士としてもさることながら、冒頭、天明6年の大火で焼け残った神田明神でオウオウと奇妙な声を出しながら、赤子や稚児の病魔払いをしている化け物じみた大男としての雷電の姿がなんとも印象に残ります。見た目が分厚いので、手に取るのをためらわれるかもしれませんが心配はご無用。冒頭のシーンから、夢中になること請け合いです。きっと、主人公・雷電の生き方に共感の気持ちが湧き上がってくるはずです。それにしても飯嶋和一、うまいなぁ。

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