映画・ドラマに学ぶ教育の本質

「黄金のアデーレ 名画の帰還」

2015年/アメリカ・イギリス合作/109分
監督:サイモン・カーティス
出演:ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュール、ケイティ・ホームズ 他

©THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

 

ナチスに奪われた1枚の名画をめぐって

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

グスタフ・クリムトが、オーストリアを代表する著名な画家であるということは高校時代に習いましたが、その絵画「黄金のアデーレ」に劇的な歴史があるということは初めて知りました。本作は、“オーストリアのモナリザ”と讃えられる国宝級の名画にまつわる、歴史的事実を描いた映画です。

1998年のロサンゼルス、マリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は夫を亡くした後、小さなブティックを経営しながら、一人で暮らしていました。ユダヤ人として波乱の人生を共に過ごした姉・ルイーゼの葬儀の後、マリアは姉が故郷・オーストリア政府にある物の返還を求めていたことを知ります。その物とは、数十年もの昔、ナチスに没収された一枚の絵画。伯母・アデーレを描いた絵画で、ウィーンの美術館に所蔵されていました。

マリアにとって故郷・ウィーンは、ナチスに家族や友人を殺され、全てを奪われた辛い過去につながる街。二度とオーストリアには戻らないと心に決めていました。しかし、実の娘のように可愛がってくれた伯母・アデーレの面影を思い出すうち、彼女は姉・ルイーゼの遺志を継ごうと思い、友人の息子で弁護士のランディ・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)に相談を持ちかけます。

ランディは弁護士として一旦は独立したもののうまくいかず、妻・パム(ケイティ・ホームズ)と赤ん坊を養うために再び雇われの身となっていました。当初、乗り気ではなかった彼ですが、その絵画がベルベデーレ美術館に所蔵された巨匠・クリムトの名画であることを知り、返還請求に力を貸すことにします。

そうしてウィーンへと赴いた2人。マリアはかつての自宅前でアーティストや音楽家、作家たちが出入りした日々を懐かしみ、ランディもまた、忘れていた家族の歴史や自分のルーツに気付き始めます。その時、ジャーナリストのフベルトゥス・チェルニン(ダニエル・ブリュール)が2人の手伝いをしたいと声を掛けます。彼には、自分の父がナチスに関与していたという忌まわしい過去があったのです。

やがて、マリアは伯母・アデーレが描かれた絵画との再会を果たします。そして、美術館の資料室からアデーレの遺言書が見つかり、絵画の所有権は購入した伯父にあり、マリアと姉に全財産を残すという伯父の遺言が法的な効力を持っていることも分かります。しかし、審問会はこの新たな証拠を却下し、返還を拒否。文化大臣は「不満なら残る道は裁判です」と冷酷に告げます。そして、一人の女性と新米弁護士がオーストリア政府を訴えるという前代未聞の裁判が幕を開けるのです。

最終的に「黄金のアデーレ」はマリアの手に戻り、その後「誰もが鑑賞できるよう、常時展示すること」を条件に売りに出され、2006年にコスメ界の大物ロナルド・ローダーによって落札されます。売買額は1億3,500万ドル。その成功報酬により、ランディは再び弁護士として独立します。

自由、平和、平等などについて何かと考えさせられる今日。1枚の絵画をめぐるこの映画は、私たちに多くのことを語りかけてくれます。

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