映画・ドラマに学ぶ教育の本質

「おじいさんと草原の小学校」

2010年/イギリス/103分
監督:ジャスティン・チャドウィック
出演:ナオミ・ハリス、オリヴァー・リトンド、トニー・キゴロギ 他
発売元:アミューズソフト
販売元:アミューズソフト
税込価格:3,990円
©2010 British Broadcasting Corporation, UK Film Council and First Grader Productions Limited. All Rights Reserved.

 

「人間らしい人間」になるために

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

私が小学生だった頃、「ひょっこりひょうたん島」という人形劇がNHKで放映されていました。その中で耳に残っているのが、「勉強なさい」(作詞:井上ひさし&山元譲久/作曲・編曲:宇野誠一郎)という曲で、歌詞は次の通りです。

(子供たち)「勉強なさい 勉強なさい 大人はこどもに命令するよ 勉強なさい」
(博士)「えらくなるために お金持ちになるために」
(子供たち)「あーあーあーあーそんなの聞き飽きた」
(サンデー先生)「いいえ賢くなるためよ 男らしい男 女らしい女 人間らしい人間 そうよ人間になるために さあ勉強なさい」(以下、続く)

この歌を子供の頃に聞いていたためか、私は「何のために勉強するのか」と問われると、すぐにこの「人間らしい人間になるために」という言葉が浮かびます。そのことを改めて教えてくれるのが、今回紹介する映画「おじいさんと草原の小学校」です。

ケニアは過酷な闘争の歴史を経て、1963年12月12日にイギリスの植民地支配から独立しました。この映画は、それから約40年後の2003年、ケニア政府が小学校の無償教育制度を導入した当時が舞台となっています。

大勢の子供や保護者たちが学校へと向かう中、一人の老人が同じように学校へと向かいます。老人の名はマルゲ(オリヴァー・リトンド)。84歳になる彼は少年時代、人種差別で学校に通えず、成人後は独立運動に身を投じ、さまざまな苦難を味わってきました。そんな彼は、手紙を読むために文字を学び、自分の人生を取り戻そうとしたのです。

しかし、学校は小学生しか受け入れない方針のため、マルゲを門前払いにします。「年寄りは寝ていればいい」「金がなく準備ができないだろう」などと言われ、馬鹿にされながらも、めげずに制服や靴を用意して入学を求めるマルゲ。その強い熱意に、校長のジェーンはついに入学を認めます。背の高い老人が、子供たちと同じ制服を着て、同じ教室でABCを学ぶ姿は微笑ましく、年齢に関係なく学ぶことの素晴らしさを感じさせます。文字を習うことによって失った過去と対峙し、それらを清算し、前に向かって歩き始めたい。この崇高な思いは、年輪を重ねたからこそ辿り着いた境地かもしれません。

しかし、そんなある日、鉛筆を削るように言われた彼の脳裏に、過去の悲惨な記憶が蘇ります。旧宗主国の英国官憲に捕えられて拷問を受けたこと、愛する妻や幼い子供を目の前で殺されたこと…。辛すぎる過去が次々とフラッシュバックし、マルゲは突然のパニックに見舞われてしまいます。

映画は、そんなマルゲと歴史を知らない子供たち、そしてマルゲの通学が原因で揺れ動く校長・ジェーンと同僚教職員たちの姿が、マルゲの過去と交錯して展開していきます。

マルゲが学ぶ言語が、妻子の命を奪った憎き英国人の母国語であるということについては、国語の教師である私としても、考えさせられるものがありました。 “学び続けること”の大切さとその過酷さを、改めて教えてくれる素晴らしい作品です。

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