Professional の仕事

第12回 学校栄養職員 丸 敏美 さん

教育活動に関わるのは教師だけと思っていませんか?学校は実にさまざまな人たちの支えによって成り立っているのです。「チーム学校」の一員として子供たちの健やかな学びを支える人々に、話を伺いました。

文・澤田 憲

p130丸 敏美(まる・としみ)さん
学校栄養職員として、小学校3校、中学校3校と船橋市教育委員会に勤務。今年で33年目を迎える。昨年度は、千葉県学校栄養士会の副会長を務める。2016年4月より、船橋市立高根中学校に勤務。

 

――学校栄養職員とは、どのような仕事ですか?

学校栄養職員は、学校給食に関わる業務全般の計画・指導・管理を行う仕事です。具体的には、給食の献立作成から食材の発注、調理指導、給食指導、衛生管理に至るまで、子供たちに毎日おいしく、安全に給食を食べてもらうために必要な仕事をしています。

 

――栄養教諭とはどのような点が異なるのでしょうか。

どちらも食に関する指導・管理を行う点は同じですが、“教員”と“職員”という職種の違いによって、業務範囲が異なる部分はあります。例えば栄養教諭の場合は、教壇に立って授業を行ったり、個人指導も行ったりしますが、教員ではない学校栄養職員がそれらを行う場合は、事前に申請が必要になります。

また、採用形態や必要な資格も異なります。学校栄養職員になる場合は、栄養士もしくは管理栄養士の資格を取得した後、各自治体が実施する採用試験に合格する必要があります。一方で、栄養教諭になる場合は、大学などで栄養教諭免許状を取得後、各都道府県の教員採用試験に合格する必要があります。

 

――丸さんが学校栄養職員を目指したきっかけをお教えください。

小学校時代からずっとお世話になっている恩師に、高校卒業後の進路を相談した際、学校栄養職員のことを教えてもらい興味を持ったのがきっかけでした。それまでは、そのような仕事があることも知りませんでした。その後、大学で病院、保健所、学校などの各施設で栄養士としての実習を行った中で、学校という職場が最も自分と合っていると思い、学校栄養職員を目指すことにしました。

 

――学校栄養職員の具体的な仕事について教えてください。

仕事の内容は、大きく「献立作成」「調理指導」「給食指導」の3つに分けられます。

1日の仕事の流れとしては、毎朝7時くらいに出勤した後、まずその日の給食に使う食材の検品や衛生状態の点検を行います。それから8名いる調理スタッフと手分けして、約400名分の給食を作ります。給食の時間は、子供たちに付き添ってバランスよく食べるように促したり、食べ残しの量を記録したりします。その後、午後は献立づくりや食材の発注、反省会などの業務を行います。

 

――献立を考える上で、気を配っている点はありますか?

特に季節感と栄養バランスに注意しています。4月ならばキャベツ、5月ならば小松菜といった具合に、なるべく旬の食材を使うように心掛けていますね。食事を通して四季の変化を敏感に感じられるようにしたいと考えています。

栄養バランスやカロリー量などは、パソコンのソフトを使って毎食の数値を計算しています。本校のある船橋市の場合、ごはんが主食のAランチとパン・めん類が主食のBランチの2種類から、子供たちが選んで食べるようにしているため、どちらを選んでもトータルのバランスが同じくらいになるように献立を組み立てています。もちろん、料理としてのおいしさや見た目にも配慮しなければなりません。いくら栄養バランスが良くても、おいしく食べてもらえなければ意味がありませんからね。

 

――丸さん自身も調理をされるのでしょうか?

調理自体は、市と契約している調理業者のスタッフの人たちが行います。学校栄養職員は、調理の確認をする立場なので、子供たちへの給食指導等を通じて得た情報をもとに、食材の切り方や盛り付け方などについて指示を出します。

また、衛生管理も重要な仕事です。掃除や器具の消毒はもちろんですが、食中毒を出さないために「中心温度75度以上で1分以上加熱し記録も全てとること」など、調理の基準を守ることも徹底しています。

 

――給食指導は、どのように行っていますか?

私が勤務している中学校では、全校生徒がランチルームに集まって給食をとります。私は部屋の中を歩き回りながら子供たちが食べる様子を見ています。好き嫌いがある生徒には、「これを食べるとこんないいことがあるんだよ」と、食材の栄養分や効果などを具体的に説明しながら「ひと口だけでも食べてみよう」と積極的に声をかけています。

その一方で、子供たちが給食を食べられなかったり、残したりする理由に耳を傾けるようにしています。味付けが濃すぎたり、食材が固すぎたり、ちょっとした理由で食が進まなくなってしまう生徒もいるからです。そのため毎日どれくらい残菜が出たかをチェックして、先生方やスタッフの方たちと反省会を行い、給食をもっと食べてもらうためにはどうしたらよいのか、日々話し合っています。

p131学校にいる時は、常に忙しく動き回っているという丸さん。食事をする生徒たちの表情をよく観察し、反応を感じ取ることが、より良い給食づくりには欠かせないと語ります。

 

――給食指導をしていて、昔と今とで変化を感じることはありますか?

果物やゼリーなどのデザート類の食べ残しが目立つようになったことですね。昔はほとんど残菜が出ませんでしたが、今は各家庭の料理が洋食化して、特別感がなくなってきたのだと思います。コンビニのスイーツなどもさまざまなものが出ていて、果物の繊細な甘みをおいしく感じられなくなってきたのかもしれません。また、和食が苦手な子、骨のある魚を食べたことがない子なども増えています。

 

――最近は、食育の重要性がますます高まっています。

そうですね。家庭で食にかけられる時間的な余裕がなくなってきているからこそ、学校給食を通じて食の有り難みや大切さを子供たちに伝えていきたいと思います。日頃、何気なく食べている食事も、動物や植物たちの命の恵みであること、そしてそれらを運び、調理して私たちの手元に届けてくれる人たちがいることを、子供たちに語りかけていきたいですね。

また、保護者の方たちに向けても給食だよりを発行したり、給食の試食会を開催したりするなどして、学校給食についてもっと知ってもらう機会を増やしていきたいと考えています。

 

――学校栄養職員の仕事をしていて、最も嬉しいのはどんなときですか?

やはり生徒が給食を残さずに全部食べてくれたときが一番嬉しいですね。完食できるかどうかは、個人の嗜好や体調はもちろん、その日の気候や活動内容にも左右されます。そうした無数の要素をあれこれ考えながら、一食一食真心を込めて作っているのが給食なのです。生徒から「おいしかった!」「残さずに食べたよ!」などの声を聞いたときは、内心「やった!」と心の中でガッツポーズをしています。

 

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