映画・ドラマに学ぶ教育の本質

「海街diary」

2015年/日本/126分
監督:是枝裕和
原作:吉田秋生
出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず 他
『海街diary』
発売元:フジテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン
DVD ¥3,800(本体)+税、Blu-ray ¥4,700(本体)+税 ほか
©2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

 

誰にだって、外からは見えない思い・不安・葛藤がある

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

長い教員生活の中では、多くの児童生徒に出会います。その性格や個性は一人一人異なりますが、不思議なもので、同じ名前の生徒からは同じような印象を受ける、という感じがしていました。

私の娘(もう結婚して子供が2人いますが)は「恵」といいますが、この名前をつけた理由の一つが、名前に「穏やかでまろやか」、でも「しっかり者」という印象を抱いていたからでした。それまで出会った「恵」という名の生徒の多くが、性格的にそんなイメージだったからです。愚かにも、自分の娘も同じように育ってほしいと願い、そう名付けたのですが…、現実はそうはいきませんでした。外向きの顔(外での性格)と内向きの顔(家での性格)との違いが、生徒たちから読み取れなかったのでしょうか。

「穏やかでまろやか」、そして「しっかり者」という印象があった多くの「恵」さんも、家庭の中では同じ顔ではいられない、何らかの事情があったのではないか。この映画を鑑賞しながら、ふとそんな風に思いました。

「そして父になる」や「誰も知らない」で国際的に高い評価を受けた是枝裕和氏の監督作品である「海街diary」は、「第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞」や「マンガ大賞2013」を受賞した吉田秋生氏の人気コミックを映画化したものです。

映画は、鎌倉に暮らす長女・幸、次女・佳乃、三女・千佳の香田家3姉妹のもとに、15年前に家を出ていった父の訃報が届くところから始まります。父の葬儀に出席するため山形へ赴いた3人は、そこで異母妹となる14歳の少女・すずと対面します。

実母はすでに亡く、父が再々婚した義理の母とその子供たちの中で、肩身の狭い思いをしていたすず。見ず知らずの香田家3姉妹を駅まで迎え、家へと案内して、葬儀の場でも毅然とした態度で振る舞います。そんな彼女の姿を見た長女・幸は、すずに鎌倉で自分たちと一緒に暮らそうと提案します。その申し出を受けたすずは、やがて一人で鎌倉の香田家へとやって来て、四女として新たな生活を始めます。

サッカー好きで明るい性格のすずは、鎌倉の生活にもすぐに溶け込み、地元のサッカーチームでも活躍します。その一方で、自分がここにいて良いのかと悩み、葛藤もします。そんな彼女を見守る3姉妹にも、それぞれ仕事や恋の悩みや葛藤があり、本作ではそれが錯綜する形で“家族の絆”が描かれています。この映画は、第39回日本アカデミー賞で最優秀作品賞や最優秀監督賞など4冠に輝きました。

本作に登場するしっかり者の長女・幸や四女となった健気なすずにも、時に冷静ではいられない葛藤があります。また、外からは天真爛漫に見える三女・千佳や、明るく奔放な次女・佳乃にも、それぞれの悩みがあります。

それは教室の子供たちも同じで、家庭環境調査票からは伺い知ることのできない、それぞれの事情や思い、不安、心の葛藤などがあります。教師は、そうした見えない部分にも踏み込んで理解しようと努めることが大切であり、そうした児童生徒理解の観点からも、お勧めの作品です。

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