Professional の仕事

第11回 指導主事 木村 文彦 さん

教育活動に関わるのは教師だけと思っていませんか?学校は実にさまざまな人たちの支えによって成り立っているのです。「チーム学校」の一員として子供たちの健やかな学びを支える人々に、話を伺いました。

文・澤田 憲

p130木村 文彦(きむら・ふみひこ)さん
都内の小学校3校に17年間教員として勤務し、通常学級と特別支援学級の担任を経験。また、体育科の指導法について実践研究を行い、東京都小学校体育研究会器械運動領域部部長を務める。2014年度より現職。今年度は、人権教育、オリンピック・パラリンピック教育を担当。「学校を支援する」指導主事を目指す。

 

 

――指導主事とは、どのような仕事ですか?

指導主事は、都道府県や区市町村の教育委員会に置かれている教育的専門職員です。管轄内の幼稚園・小学校・中学校・特別支援学校で、教育課程や学習指導要領を踏まえた指導が適切に行われているかを確認し、必要に応じて指導や助言を行います。その他に、教員の研修を企画・運営したり、教科書の採択に関わったり、時には保護者や住民からの意見などに対応したりもします。学校教育に関することは、何でも引き受けている感じですね。

 

――木村さんが指導主事になるまでのご経歴をお教えください。

指導主事になる前は、東京都の小学校教員を計17年間務めていました。そのキャリアの中では、障害のある子を対象とした通級指導学級を担当していたこともあります。その後、2014年4月に葛飾区教育委員会の指導主事となり、今年で3年目を迎えます。

 

――指導主事になるために必要な資格や条件はありますか?

指導主事については、地方教育行政の組織及び運営に関する法律で、「教育に関し識見を有し、かつ、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項について教養と経験がある者でなければならない」と定められています。つまり、経験の浅い新人教員が指導主事になることはありません。一方で、長く教員を務めれば必ず指導主事になるというわけでもありません。

東京都の場合、校長から推薦を受けた人が教育委員会実施の教育管理職A選考を受け、合格した人が指導主事として任用される仕組みが整えられています。他の自治体では、それまでの実績等を受けて、指導力のある教員を“一本釣り”するケースも多いようです。

 

――日頃、どのような活動をされているのですか?

葛飾区には、6名の指導主事がいます。現在、区内には計77の幼稚園・小学校・中学校があり、指導主事が2人1組となり、全体を3分割する形で指導・支援しています。

具体的な業務としては、各学校の教育活動全般に対する指導・助言が挙げられます。各学校の校長先生は、年度ごとに実施する行事や授業時数などを定めた教育課程を教育委員会に届け出ますが、指導主事はそれらが計画通りに実施されているかを確認し、必要に応じて指導や支援を行います。また、担当校で実施される研究授業に、講師として参加することもあります。

 

――仕事は、教育課程に関することが多いようですね。

そうですね。ただ、教育課程だけでなく、生徒指導に関わることもあります。児童生徒同士のトラブルがこじれ、学校だけでは解決が難しくなった場合などは、指導主事が警察や児童相談所などの関係機関と連携を図り、協議する場を設けたりします。また、保護者や地域住民などの対応において、学校だけでは収拾がつかなくなった場合、解決を図るために学校での話し合いに参加することもあります。

 

――その他に、どのような仕事がありますか?

事務的な仕事としては、文部科学省などから依頼された学校基本調査や学力調査、問題行動調査などのデータを各学校に配付し、回収・集計する仕事もしています。得られた調査結果は、自治体の教育施策を考えたり、対策を講じたりするためのエビデンスとしても活用します。

また、教員に対する法定研修(初任者研修、10年経験者研修など)を運営・実施したり、教務主任や生徒指導主任を対象とした、区独自の研修を企画・運営したりもしています。指導主事は、学校現場と教育委員会の“橋渡し役”と言ってもよいかもしれません。

 

――指導主事の立場から学校と関わるようになって、何か感じることはありますか?

指導主事になったことで、学校教育に対する見方が大きく変わりました。区内にあるさまざまな学校を回り、各々の現状を見た上で、全体の施策を考える立場になったことで、より広い視点で学校教育を捉えられるようになった気がします。また、庶務課や学務課など多くの支援があって学校教育が行われていることが分かりました。

 

――指導主事を務めた後は、どのようなキャリアを歩まれる方が多いのですか?

人によって異なりますが、一般的には副校長などの管理職として、再び現場に戻る人が多いですね。管理職となった後、再び教育委員会に戻り、指導主事を束ねる「統括指導主事」になる人もいます。

 

――業務の中で大変だったり、難しいと感じたりする部分はありますか?

やりがいだと感じるのは、行政の施策をいかにして浸透させていくか、どのようにして現場の先生方に積極的に取り組んでもらうかを考えることです。

例えば、葛飾区では昨年度から「葛飾区チャレンジ検定」という取り組みを始めました。これは国語や算数・数学、英語、体力といった検定試験を区独自に行い、合格した子供たちに賞状を渡すというもので、主たるねらいは学力向上とともに、自尊感情を高めることにあります。コツコツと勉強すれば必ず合格できるようになっていて、子供たちに「できた!」という成功体験を味わってもらうことを大切にしています。

しかし、先生方の中には「ただでさえ忙しいのに、またテストをやるのか…」と、うんざりする人もいると思います。だからこそ、ただ「やってください」と上意下達に指示するのではなく「一緒に子供たちの未来をつくっていきましょう!」と、ひざを突き合わせて丁寧に説明する姿勢が大切だと思っています。せっかく良い施策を打ち立てても、実践する先生方が前向きにならなければ、その効果や成果は現れません。指導主事としては、「この人が言うならやってみよう」と思ってもらえるよう、先生方と信頼関係を築くことが不可欠だと感じています。

 

――指導主事の仕事の醍醐味は、どのようなところにあると感じていますか?

学校で生じた課題やトラブルを、協力しながら解決できたときは嬉しいですね。私がそもそも教員を志したのは、小学校の頃に手を差し伸べてくれた先生に憧れて、「自分も先生のように人の役に立ちたい」と思ったからです。今はその対象が子供ではなく学校ですが、どんな立場になってもその初心は忘れないでいたいと思います。私が関わることで現場の先生が元気になれば、それが子供たちを救うことにもつながるのだと信じています。子供たちにとって、最大の教育環境は教師だからです。

p131教員時代は、ほぼ毎日学級通信を発行したり、児童一人一人の出来事をノートに記録したりしていたという木村さん。自分が教員時代に培ったノウハウや経験は、惜しみなく伝えていきたいと語ります。

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