カリスマ教師の履歴書

File.14 神田 宇士先生(東京都立東大和高等学校)

教師として、音楽家として日々生徒と向き合う

平成27年度文部科学大臣優秀教職員として表彰された神田宇士先生。音楽の教員として、吹奏楽部を指導する傍ら、地域の中学・高校と音楽を通した交流を行ったり、学校運営においては成績処理のために導入されたシステムの運用を校内に広めたりとマルチな才能を発揮しています。そんな神田先生に、教員になった経緯や教師という仕事のやりがい等について伺いました。

カリスマ神田先生 メイン

 

文・平野 多美恵

 

「生徒一人ひとりと関わりたい」その強い思いが夢を引き寄せた

音楽大学を卒業後、私立高校の非常勤講師やプログラマーとして勤務しながら東京都の教員採用試験に挑んだという異色の経験を持つ神田先生。プログラマーとしての勤務時間は長く、音楽に関われないことがストレスだったと当時を振り返ります。また、非常勤講師では、生活指導や部活動の指導に携われないことから、生徒と十分に向き合えない日々。「音楽に関わりたい」「生徒ともっと向き合いたい」という思いが、音楽の教員になろうとするモチベーションの維持につながったと言います。

そんな神田先生ですが、プログラマーとして働いた経験は、無駄ではなかったと振り返ります。理由の一つは、いずれ社会へと巣立つ生徒たちに、社会人経験を伝えられること。自身の体験を伝えることで、生徒たちの視野を広げたいと話します。もう一つは、プログラムの知識が日々の校務に生きていること。東京都では成績処理のシステムを導入していますが、ICTに関する知識のおかげで、システムの利用方法が難なく理解できたため、神田先生の学校では導入がスムーズだったそうです。

音楽の教員になって良かったと思うのは、指導したことや授業内容が生徒のプラスになっていることが実感できたときだと話します。その一つが、合唱コンクール。現在、神田先生が勤務する東大和高校では年1回、クラス対抗の合唱コンクールが行われていますが、コンクールの前になると、神田先生は音楽を選択していない生徒も含め、全てのクラスを指導します。そしてコンクール当日、クラスが一体となって練習の成果を発揮し、達成感一杯の表情を浮かべた生徒の姿を見ると、音楽教師としての大きな喜びを感じると言います。

 

音楽の指導に悩む日々転機は小中学校の先生との意見交換

音楽大学で作曲を専攻し、副科として声楽を学んだという神田先生。「音楽の教師は、音楽家であるべき」という考えのもと、現在も自己修練に努め、今もオペラの舞台に立ち続けています。こうした第一線での経験を指導に生かす一方で、以前は「譜面を読む」「音程を取る」などの基礎ができない生徒に、どう指導すればよいかと悩む日々が続いていました。

「譜面を読む、音程を取るというのはそれまでの音楽経験によって差が出ます。でも、私自身が基礎でつまずいた経験がないので、どう指導すればよいかがピンとこなかったのです。自分なりに考え、研究もしましたが、モヤモヤとした思いを抱え続けていました。」転機となったのは、東京都教職員研修センターが行う教師道場に参加したことでした。同じ音楽教員仲間との交流を通じ、“スモールステップ”でできることを積み上げていく指導ができていない自分に気付いたといいます。中でも大きかったのは、小中学校の先生との意見交換だったそうす。

高校の音楽指導は、教師の裁量に任されている部分が大きいのに対し、小学校や中学校は学習指導要領に基づく形で、綿密な指導計画が立てられています。教師道場で得たそうした知見を基に、神田先生は改めて自身の指導案を立て直しました。スモールステップで一段ずつ、生徒のできることを増やしていき、ステップごとに評価するようにしたのです。

また、授業の導入では、生徒が興味を持つような工夫も取り入れました。例えば、音楽鑑賞の授業では、作曲家に関する基礎知識を教えるところから入っていたのを、最初にメロディーを聴かせるように変更しました。そして、明るい感じ(長調)のところと暗く悲しい感じ(短調)のところを意識させ、それぞれの曲調に合わせた歌詞を生徒たちに作らせ、次の段階で本来の歌詞を示し、歌い手の音の強弱、クレッシェンド(だんだん強く)やデクレッシェンド(だんだん弱く)などの表現をメモに取らせて、歌詞との関係を考えさせました。長調・短調を意識することから音楽表現、そして音色へと鑑賞を深めていくのです。

「音楽は言葉ほど意味が明確ではありませんが、美しさや悲しさといったものを表現するコミュニケーションの手段。言うなれば感情の言語です。今後はこうした授業をさらに発展させ、『素敵な絵を見た時にどんな音楽を聞きたいか』といったところまで、鑑賞が深まるようにしたいですね。」

 

カリスマ神田先生 サブ

 

部活動では他校との交流を重視音楽を通じて“会話”する機会を作る

現在、神田先生は吹奏楽部の顧問も務めています。その中で重視しているのは、生徒の「自主性」を大切にすること。普段の活動は生徒同士が話し合い、生徒主体で進められています。神田先生自身は、生徒が他校生と交流できる機会づくりに力を注いでいます。

「吹奏楽部の活動は、コンクールに出場したり、定期演奏会を開催したりというのが中心ですが、校内で活動しているだけでは、音楽本来の良さを体感できません。音楽の魅力は、コンクール等で“競う”だけでなく、みんなで音を合わせるなど、音楽を通じて“会話”をすること。そのために、周辺の高校や市内の中学校との合同活動を行っています。」

神田先生が東京都高等学校文化連盟音楽部門の多摩北地区顧問となり、吹奏楽部の部員から地区役員を出したことから、周辺校の吹奏楽部や合唱部との交流は活発化しました。さらには、東大和市の教育委員会と協力して、市内の中学校との合同講習会や演奏会も開催しています。2015 年度には、台湾から高校生の吹奏楽団が来校したことから、その期間中に市内の中学、高校と共に合同演奏会を開催。その他に、関東近郊の小編成の吹奏楽団とのコンサートやアンサンブル講習会なども行ったそうです。

今年度は1年生の学級担任を務めるなど、多忙な日々を送る神田先生。

「自分が高校生の頃と比べると、今の生徒は幼いところを残しているように感じます。それでも、彼らは日々、成長をしていきます。その様子を身近で見ることができる教師は、本当に素晴らしい仕事だと思います。また、教師の一挙手一投足に敏感に反応する生徒たちを見ると、こちらも全身全霊で対応しなければという気持ちになります。私自身も常に変化し、成長していかなければならないと感じています。」

 

カリスマ神田先生 顔

 

Profile
神田 宇士(かんだたかし)
1974 年5 月16 日生

1974年 千葉県出身
1997年3月 国立音楽大学卒業
2004年4月 東京都立多摩高等学校に赴任
2008年4月 東京都立東大和高等学校に赴任(現職)

座右の銘
音楽の教師は、常に音楽家であるべき
趣味・特技
オペラ歌手(二期会準会員)

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