教師の本棚

『旅屋おかえり』

P135

原田 マハ=著
2014年/集英社文庫
600円+税

 

同じクラスになること、それは共に旅に出ること

遠江 久美子(東京都町田市立鶴川第二中学校教諭)

『旅屋おかえり』の主人公は売れないタレント“おかえり”こと丘えりか32歳。今や唯一のレギュラーは旅とグルメ番組のリポーター役だけ。そんな彼女に追い討ちをかけるように番組の打ち切りが決定します。そんな折、「病気で入院生活を続ける娘に代わって旅に出てほしい、そして、その様子を娘に報告してほしい」との依頼が舞い込み、“おかえり”は旅屋を始めます。ある時は、満開の桜を求めて秋田県角館へ。またある時は、依頼人の姪を探して愛媛県内子町へ。“おかえり”は行く先々で出会った人々を笑顔に変えていきます。

クラス開きの4月になると、私はいつも思うことがあります。“クラス分け”とは、たまたま同じクラスという電車に乗り合わせた生徒と教師が1年間、その電車で旅をすることだと。生徒たちは「体育祭」という駅で降りて、他人のために一心不乱に声をからします。そして、みんなと熱くなる心地良さが身体のすみずみまで広がります。「合唱コンクール」という駅では、歌が好き、嫌いで対立して喧嘩ばかりします。でも、クラスがハーモニーを奏でた瞬間の優しい空気は最高だということに初めて気付きます。

旅が長くなると、自分勝手な部分が出たり、嫉妬したり、意地悪をしたくなったり、素直になれなかったりと、隠していたものが隠しきれなくなります。そうした日々の中で、教師はもみくちゃにされながら、互いが仲間の良さを拾い合えるように奮闘します。下車した駅ごとにたくさんの出来事があり、無数の感情が生まれます。1年間の旅はこうして、生徒と教師を成長させます。でも、旅の終わりでしんみりするのは、教師だけです。生徒たちは、終点で勢いよく電車を飛び降り、振り向きもせずに次の電車に飛び乗ります。そうです。彼らはこれからの新しい旅にワクワクしているのです。

教師も、本作の“おかえり”も、旅でしか得られないものを求めて旅をします。あなたはあなたの生徒とどんな旅をしますか?

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