映画・ドラマに学ぶ教育の本質

「I am Sam アイ・アム・サム」

2001年/アメリカ/133分
監督:ジェシー・ネルソン
出演:ショーン・ペン、ミシェル・ファイファー、ダコタ・ファニング 他

『I am Sam アイ・アム・サム』
DVD 1,429 円+税
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

 

親子本来の関係を教えてくれる教師必見の映画

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

教師をしていると、保護者からの苦情に悩んだり、わがままな要望にあきれてうんざりしたりといったことが、ないわけではありません。時に、法外な要求に怒りを覚えることもあります。しかし、親は一生涯に渡り、自分の子供と付き合い、共に成長していきます。子供にとっては、人生の最初で最大の師が親であることに違いはありませんし、親は自分の子供が特別に可愛く、子供の幸せを一番に考えるものです(最近は自分の次という親もいるかもしれませんが…)。だからきっと、そうした愛情が、時に過度な要求となってしまうのでしょう。一方、教師が子供たちと接するのは、せいぜい3年から6年の限られた期間に過ぎません。その意味で、基本的に教師が保護者である親を越えることはできませんし、それが許されることもありません。だからこそ保護者との協働、これだけが唯一、教師が子供を育てる鍵だと私は考えています。

7歳の知能しか持っていない中年男性のサム。付き合っていたホームレスの女性が出産後に失踪したため、自分一人で娘のルーシー・ダイアモンドを赤ん坊から苦労しながら育て、親子で幸せに暮らしていました。しかし7 歳になったルーシーは、やがてサムの知能を追い抜いてしまいます。そして、ソーシャルワーカーに「サムには父親としての養育力がない」と判断され、施設で保護されることになります。

失意のサムは法廷で闘う決意を固め、エリート弁護士のリタに依頼をします。リタは自分が利益を追うだけでなく、社会奉仕の仕事も引き受けるということを周囲に示すため、弁護を引き受けます。しかし、裁判はサムにとって明らかに不利な状況で進んでいきます。障害のある彼の友人たちは法定で普通に証言することができず、サムのために外出恐怖症を乗り越えて証言台に立った隣人・アニーも、検察官にやり込められてしまいます。

サムが落ち込んでいる頃、保護施設に預けられたルーシーもサムとの生活を懐かしみ、むしろ2人は次第に親子の絆を深めていきます。結局、サムには条件付きの親権が認められるものの、ルーシーは里親のランディ夫妻らと共に暮らすこととなります。諦めきれないサムはランディ夫妻一家の近所に引っ越し、ルーシーも毎日のように彼に会いにいくようになります。そして、やがてランディ夫妻や周囲の人間も、2人の深い愛情と断ち切りがたい親子関係を認め始めます。

障害のある親が、一人で子供を育てることの困難さは、並大抵のことではないでしょう。常識に基づく周囲の無理解や誤解が、時に親子の絆や関係を傷つけたり損なったりするケースもある。それが、本作を通してよく理解できます。子供のために良かれと思って行った保護や隔離も、子供にとっては親から引き離される悲しみや痛みを伴い、辛くて耐えがたいことになるのです。どんな親でも、子供にとってはかけがえのない唯一無二の存在なのですから。児童虐待や我が子の殺害など、信じられないような酷い事件も報じられる現代の社会ですが、親と子の本来の関係を感動的に教えてくれる教師必見の映画です。

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