学校不祥事の顛末

スピード違反等の交通違反を繰り返す

【今月の事例】
酒気帯び運転で検挙
A県教育委員会は、スピード違反や無免許運転など交通違反を繰り返したとして、県立高校の男性教諭を懲戒免職処分にしたと発表した。県教委によると、男性教諭は高速道路で自家用車を運転中に速度超過違反を行い、1年間の運転免許取り消し処分を受けた。その後、運転中に携帯電話を使用していて検挙され、免許を取得しないまま運転していたことが発覚。いずれも勤務時間中に私用で職場を離れた上、検挙されたことを学校長に報告していなかった。教諭は県教委に対し「全て最初から報告しておけばよかった。生徒がいるのでルールを守らなければ教壇には立てない。申し訳ありませんでした」と話しているという。

【法律家の眼】

過ちを隠さずに
報告・相談することの大切さ

弁護士 樋口 千鶴(上條・鶴巻法律事務所/東京都教育委員会公益通報弁護士窓口)

 

1 交通三悪とは

「飲酒運転」「無免許運転」「速度超過」を「交通三悪」と呼ぶことがあります。三悪と言われる理由は、これらが原因となる事故に、死亡事故などの重大事故が多いためです。
本事例の男性教諭は、このうち「速度超過」「無免許運転(免許を取得しないまま運転)」により処分されています。危険極まりない運転を常習的に行っていたと言わざるを得ませんが、問題はそれだけでなく、私用で職場を離れたこと、検挙されたことを管理職に報告しなかったことも重大問題です。以下、個別に見ていきましょう。

 

2 道路交通法と速度超過

運転免許を所持している人はご承知のことと思いますが、道路を走行する際の最高速度は法定されており(道路交通法第22条)、これを超過すると速度超過として反則金や罰金の対象になることがあります。ごく簡単に説明すると、比較的軽微な違反で科されるのが反則金ですが、それ以上に悪質な違反で科される刑事罰が罰金です(同法第118条第1項第一号・同条第2項)。速度超過の程度によって反則金で済むケース、略式手続で罰金というケース、免許取り消し処分を受けるケースなどさまざまです。

 

3 携帯電話と交通違反

近年、携帯電話やスマートフォンの普及に伴い、運転中の操作が原因となる事故が頻発するようになりました。そのため、道路交通法もこうした社会情勢を受けて改正されています。
例えば、改正前、罰則の対象は、運転中の携帯電話等の使用により「道路における交通の危険を生じさせた」場合のみでしたが、改正後は、運転中に携帯電話を手に持って通話したり、メールの送信などのために画面を注視したりといった行為だけでも、罰則の対象になります(道路交通法第71条第五号の五、第119条第1項九号の三、第120条第1項第十一号)。

 

4 自転車と携帯電話

本事例から離れますが、皆さんの中には自転車を利用する方も多いと思います。自転車は気軽に利用されますが、スマートフォンなどを見ながらの「ながら運転」は重大事故につながりかねず、大変危険です。例えば、東京都の場合、携帯電話を使用しながら(画像注視を含む)の自転車運転に対し、5万円以下の罰金が科されます(東京都道路交通規則)。携帯電話の使用は、自動車だけでなく自転車でも差し控えるよう気を付けてください。

 

5 違反をしてしまったら

本事例の男性教諭は、上記のような交通法規違反を常習的に行っていたとみられ、規範意識が極めて薄いと言わざるを得ません。例えば東京都の場合、無免許運転、著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員に対する処分が「免職」または「停職」が標準とされているように、男性教諭の違反行為に対しては、この時点で厳しい処分が見込まれていました。
ただし、男性教諭の問題点はこれだけではありません。まず、私用で職場を離れていたことは、地方公務員法上の職務専念義務違反に当たります。加えて、管理職への報告を怠り、不祥事を隠ぺいしようとしたことで、自ら「懲戒免職」という最も重い処分が避けられない事態を招いたのです。
間違いを犯してしまった時、その人の真価が問われるのではないでしょうか。過ちを隠ぺいすることなく、速やかに報告、相談することの大切さをこの事例から学んでいただければと思います。

 

【教育者の眼】

自らの甘い考えがもとで
教師という職を失うことも

濱本 一(共栄大学教授/前埼玉県教育局市町村支援部長)

 

■教師の信頼は、教師としての自覚から

今回は、県立高校の男性教諭による「スピード違反+無免許運転」という交通違反に基づく、懲戒免職処分の事例です。一般的に、スピード違反だけで懲戒免職処分にはなることはありませんが、本事例はスピード違反で免許取り消し処分を受けたにもかかわらず、その処分が終わらないうちに運転し、検挙されています。加えて、勤務時間中に私用で職場を離れての出来事です。度重なる法令遵守の無視であり、教育者としての自覚や使命感は微塵も感じられません。
教師は日頃から社会のルールを守ること、校則を守ることなどを生徒に指導している立場です。そうした人間が、これだけ規則違反を重ねたとあれば、生徒たち、保護者たちはどんな目で見るのでしょうか。
その意味でも、教師に対する社会的信用を著しく失墜させる行為、すなわち地方公務員法第33 条が定める「信用失墜行為の禁止」の違反に該当します。懲戒免職処分は当然の帰結であり、実名が公表され、社会的な制裁を受けることになるでしょう。

 

■元凶は自己中心的な「甘い考え」

学校外での行動・言動については、「他人にバレなければ大丈夫」という甘い考えから、法令違反に至ってしまうケースが少なくありません。本事例の教員は、状況から見て、校長に報告をしないまま、勤務場所を私用で離れています。この点は、地方公務員法第35条が定める「職務専念義務」にも抵触しています。この教諭は普段から「職務専念義務」についての意識が薄く、上述したような「バレなければ大丈夫」という自己中心的な考えが、潜在的にあったのでしょう。
日頃から、管理職や同僚との「報告・連絡・相談」を欠いた、身勝手な行動が多かったのではないかと推測できます。処分後、この教諭は「全て最初から報告しておけばよかった」と話していますが、どこまで本心なのか、定かではありません。その甘い考えが、職を辞するに至った要因の一つでしょう。
懲戒免職処分は自業自得と言えますが、可哀想なのは教え子である生徒とその保護者、そして同僚の教員たちです。たった一人でも、こうした不祥事を起こせば、その影響は計り知れません。

 

■不祥事防止の意識

こうした不祥事が起きないようにするため、教師にはどんな心がけが求められるのでしょうか。具体的に、以下のようなことが挙げられます。

〇 教師は子供の範である。法の遵守など規範意識をしっかりと持つこと
〇 教師であることの職責の重さと責任を自覚すること
〇 どんな時も、どんな場所でも、誰に見られても恥ずかしくない行動を意識すること
〇 管理職、同僚に「報告・連絡・相談」をしっかり行うこと
〇 コミュニケーションを図り、風通しの良い職場づくりをすること
〇 不祥事を起こすと、「児童生徒」「学校」「家族」に重大かつ取り返しのつかない影響を及ぼすことを意識すること

交通事故を起こすと、「行政上」の処分はもちろん、「民事上」「刑事上」の責任を問われることもあります。教師としての強い自覚と使命感をもって、不祥事防止に努めるようにしてください。

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