学校不祥事の顛末

酒気帯び運転で検挙

【今月の事例】
酒気帯び運転で検挙
A県教育委員会は、酒気帯び運転で検挙された同県B町立中学校の男性教諭を同日付で懲戒免職処分にしたと発表した。県教委によると男性教諭は夜に飲食店で友人と酒を飲み、仮眠を取った後に乗用車で自宅に向かった。午前4時15分頃、パトロール中の警察車両に呼び止められ、呼気検査を実施したところ、基準値を超えるアルコールが検出された。このため罰金30万円の略式命令および運転免許取り消し処分を受けた。男性教諭は以前にも、運転中に無免許運転で検挙され、罰金40万円の略式命令を受けていた。

 

【法律家の眼】

厳罰が科される飲酒運転
安易な考えに流されないこと

弁護士 樋口 千鶴(上條・鶴巻法律事務所/東京都教育委員会公益通報弁護士窓口)

 

1 飲酒運転の危険性

酒酔い運転とは、アルコールの影響により車両等の正常な運転ができない状態を言い、罰則がある酒気帯び運転は呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg / L 以上の状態を言います。
お酒に強い・弱いなどの表現を使うことがありますが、強い弱いにかかわらず、アルコールは脳の機能を麻痺させます。そうすると、注意力や判断力が低下することから、ブレーキが遅れたり、速度超過に気付かなかったりと、危険な運転へとつながります。当然、事故率も上がり、重大事故を引き起こす可能性も高まります。そのため、飲酒運転には厳しい罰則があり、「飲んだら乗るな」といった啓発活動がなされているのです。

 

2 飲酒運転に関連する罰則の例

(1)自動車運転死傷行為処罰法
■危険運転致死傷罪(第2条・第3条・第6条)
アルコールの影響により正常な運転が困難な状態
○ 人を負傷させた場合:15年以下の懲役(無免許の場合は6か月以上の有期懲役)
○ 人を死亡させた場合:1年以上の有期懲役
アルコールの影響により正常な運転に支障が生じる恐れがある状態で正常な運転が困難となり
○ 人を負傷させた場合:12年以下の懲役(無免許の場合は15年以下の懲役)
○ 人を死亡させた場合:15年以下の懲役(無免許の場合は6か月以上の有期懲役)
■過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(第4条)
アルコールの影響により…自動車を運転して人を死傷させた場合に、運転時のアルコールの影響の有無又は程度が発覚することを免れる行為をしたとき:12年以下の懲役(無免許の場合は15年以下の懲役)

(2)道路交通法
①運転者本人
■酒酔い運転(第65条第1項)
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第117条の2第一号)
■酒気帯び運転(第65条第1項)
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第117条の2の2)
■救護義務違反(第72条):いわゆる「ひき逃げ」
免許取消、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第117条第2項)
②運転者本人以外
■車両等を提供した者(第65条第2項)
運転者が酒酔い運転:5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
運転者が酒気帯び運転:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
■ 酒類等を提供した者、飲酒を勧めた者、運送を要求・依頼し同乗した者(第65条第3項・第4項)
酒酔い運転:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第117条の2の2第五号)
酒気帯び運転:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金(第117条の3の2第二・三号)

 

3 教員に対する処分量定

例えば、東京都の場合、「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」が公開されています(東京都教育委員会Webサイト)。以下、飲酒運転に関する部分を抜粋してご紹介しますが、いずれも免職・停職など重い処分が定められています。

■ 飲酒運転での交通事故
・酒酔い運転又は酒気帯び運転で人を死亡させ、又は傷害を負わせた⇒免職
・酒酔い運転で物を損壊した⇒免職
・酒気帯び運転で物を損壊した⇒免職又は停職
■ 交通法規違反
・酒酔い運転をした⇒免職
・酒気帯び運転をした⇒免職又は停職
・飲酒運転になる恐れがあることを知りながら車両又は酒類を提供した⇒免職又は停職
・飲酒運転であることを知りながら車両に同乗した⇒免職又は停職

 

4 一瞬の油断で一生が台無しに

「お酒に強いから大丈夫」「少ししか飲んでいないから大丈夫」「もう醒めたから大丈夫」などと安易に考えて飲酒運転をし、後悔している人はたくさんいます。重大事故を起こせば取り返しがつきません。
また、自分が飲酒運転をしなくても、飲酒している人に車を貸したり、車に乗る人にお酒を飲ませたり、飲酒している人の車に同乗して家まで送ってもらったりすれば、厳しい処分を受けます。その場の勢いや安易な考えに流され、一生を台無しにすることがないようお酒の席でも節度を守ってください。

 

【教育者の眼】

後悔しても後悔しきれない
飲酒運転という大過

濱本 一(共栄大学教授/前埼玉県教育局市町村支援部長)

 

■手本であるべき教員が犯した罪の大きさ

今回の事例は、中学校男性教諭による酒気帯び運転。こうしたニュースを聞くと、「また、教員の酒気帯び運転か…」という思いがします。現在、教職員の不祥事において、最も多くマスコミに取り上げられるものの一つが酒気帯び運転や酒酔い運転、それに伴う物損事故や人身事故です。こうした不祥事には、懲戒免職など最も重い行政罰が下されます。なぜでしょうか。それは、「交通ルールを守りましょう」と日々子供たちに指導し、人々の手本であるべき教員が犯した罪だからです。
事例の男性教諭は、以前にも無免許運転で検挙されており、反省の念はないのかと考えてしまいます。40万円もの罰金を支払ったことも忘れ、「仮眠を取れば大丈夫」「この程度の酒量なら自分は大丈夫」などと自己中心的に考え、浅はかな気持ちで飲酒運転を行う。絶対にあってはならないことです。人身事故に至らなかったことは、不幸中の幸いと言えるでしょう。
過去の処分歴などを見ても、この教員はおそらく、どの都道府県・政令指定都市においても懲戒免職となることでしょう。

 

■誰に見られても恥ずかしくない行動を心掛ける

次の言葉は、懲戒免職となったある教員のものです。
「取り返しのつかないことをしてしまった。子供たちや保護者の方々を裏切ってしまった。懲戒免職になり退職金も受け取れず、仕事のアテもない。ローンも払えなくなり、購入した自宅も売るしかなかったが、それだけでローンの残高は賄えず、借金が残ってしまった。これからどのように暮らしていけばよいか分からない。後悔しても後悔しきれない。」
事を起こしてしまえば、反省しても後の祭りです。不祥事は家族を悲しませ、家庭を崩壊させることになります。不祥事を起こさないためには、どんな時も、どんな場所でも、「誰に見られても恥ずかしくない行動」を心掛けることです。それが教職への自覚にもつながります。

 

■運転手以外が処分される可能性も

この事例には、一つ気になる点があります。「友人と酒を飲み」とありますが、この「友人」とは誰かということです。仮に、同僚の教員だったとすれば、これもまた大きな問題となります。
相手が運転することを知りながらお酒を勧めた場合、あるいは飲酒運転であることを知りながら同乗した場合、今日では大変厳しい処分が下されます。ある自治体の「懲戒処分の基準」を見ると、「酒気帯び運転等を知りながら飲酒を勧めた教員」に対する処分は、「免職」または「停職」となっています。また、「酒気帯び運転等と知りながら同乗した教員」に対する処分は、「停職」または「減給」となっています(自治体によって異なります)。
このように、状況によっては、運転者以外も処分されることがあります。こうした不祥事が起きないよう、教職員同士が互いに声を掛け合い、コミュニケーションを図りながら、風通しの良い職場づくりをしていくことが、不祥事の防止を図る上で大切なのです。

教育データ対策 これ一冊でいっき解決! 3ステップ過去問分析の進め方 教員養成セミナーのご紹介 教セミLine@ 教員採用試験対策サイトへ

最新号のご案内