Professional の仕事

第9回 部活動支援員 西 倫未 さん

教育活動に関わるのは教師だけと思っていませんか?学校は実にさまざまな人たちの支えによって成り立っているのです。「チーム学校」の一員として子供たちの健やかな学びを支える人々に、話を伺いました。

文・澤田 憲

P126西 倫未(にし・ひとみ)さん
武蔵野音楽大学卒業。フリープレイヤーとして映画音楽やアーティストのレコーディング参加など、ジャンルや形態にこだわらず活動を行う。2014年より単独公演に挑戦し、毎年開催することを目標に継続中。また「楽器演奏や活動を通して子供たちにさまざまなことを学んでほしい」という想いから、指導にも精力的に取り組んでいる。部や活動の規模に関わらず、指導者を探している学校があればご相談ください!

 

――部活動支援員の役割について教えてください。

部活動支援員は、各学校の部活動をサポートするための制度です。世田谷区教育委員会の独自の取り組みで、2006年4月から区内の全中学校を対象にスタートしました。部はあっても指導できる先生がいない、あるいは顧問の先生が忙しくて指導に時間が割けないなどの場合に、外部からコーチや監督を招いて、部活動を充実させることが目的です。

2014年度の実績では、区内の中学校374部で計458人の部活動支援員が活動を行いました。この制度の開始以降、年を追うごとに部活動の数や加入率が上がっており、サポートの効果が表われているようです。

 

――部活動支援員になるために、必要な資格や条件はあるのでしょうか?

資格は必要ありませんが、応募すれば誰もがなれるわけではありません。部活動支援員は公募ではなく、各中学校が地域住民や保護者、近隣大学の学生など、信頼のおける関係者に委嘱する形で集めています。

必ずしも専門家である必要はありませんが、部活動の質を向上させるという目的から、ある程度の専門知識や技術、経験を積まれている人に頼んでいる状況にあります。

 

――西さんが部活動支援員になられた経緯を教えてください。

私が支援員になったのは、今から約2年前です。音楽大学を卒業した後、現在まで演奏家としても活動を続けてきましたが、中学校の教員になった大学の同窓生から「吹奏楽部の指導ができる人を探している」と声がかかり、関わらせていただくことになりました。

それ以前も、コンクール前の1カ月間などの期間限定で、集中的に吹奏楽部のコーチに入るなどはしていましたが、年間を通じて継続的に生徒を指導できる点に、魅力を感じました。実際にやってみて、子供たちの成長を日々実感できることに、大きなやりがいを感じています。

 

――日頃、どのような活動をされているのでしょうか?

今は週に2~3回のペースで、放課後の16~ 18時の間、指導にあたっています。支援員は有償ボランティアという位置付けになるため、各学校の年間予算に応じて活動上限を決め、顧問の先生と相談しながらスケジュールを組んでいきます。基本的に、単独で生徒を指導することはなく、顧問とペアで指導に携わります。

活動内容は、合奏指導や技術指導のほか、サポートに入らない日のために自主練習用のカリキュラムも作成しています。指導ノートに各パートの課題と練習メニューを書き、それを基に生徒たちが自主練習を行い、私が来たときに合奏してその成果を見せるというのが基本的なサイクルですね。

 

――子供たちを指導するときは、どのようなことを心掛けていますか?

私が指導している吹奏楽部には現在25名の部員がいますが、一人ひとり個性も経験値も全く違います。合奏では、個人練習のように手取り足取り教えることはできませんし、一人でも足並みが揃わないと良い音楽を奏でることができません。たとえ9割の人ができていても、残り1割の人ができていなければ0点になってしまうのが合奏なのです。そんな時、感情的にならず生徒自身に状況を理解させ、協力して改善するという自主性を持たせること、また言葉で伝えるときはなるべく専門用語を使わず、子供が想像しやすい表現を選ぶことなどに気を付けています。

そのため、例えば「テンポを上げて」ではなく「速さを上げて」と伝えるなど、なるべく専門用語を使わず、経験が少ない子にも分かるような指導を意識しています。

 

――部活動を指導する上で、難しさを感じることはありますか?

日々の指導の中で、本人は頑張っているつもりでも、しっかり演奏できていなければ厳しく指導することもあります。そんな中で、ごくまれに保護者の方から「あまり子供に辛い思いをさせないでほしい」とご意見をいただくこともあります。ただ、部活動は生徒が自分で決めて、自分のためにやっていることです。もちろん、楽器を演奏する喜びを感じてもらうことが一番ですが、より成長するためには、ときには覚悟をもって臨む必要があることを、保護者の方にもご理解いただけるようにしたいと考えています。

P127春の発表会に向け、合奏の指導をする西さん。子供たちにテキパキと指示を出しながら、時折冗談を交えて楽しく指導します。

――印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

一番の思い出は、昨年夏のコンクールですね。一昨年の夏は、期待していた結果を残すことができなかったんです。今の中学生はとにかく忙しくて、塾通いと部活動を両立させねばならない子も多く、そもそも入部自体が強制ではないので、コンクールでの優勝などを求めて入ってくる子ばかりではありません。

自分が中学生のときは、かなり厳しかったのですが、今の子供たちにそれを強制することはできません。そのため、一昨年のコンクールが終わった後、今後の部活動の方針について「自分たちが好きな曲を楽しく演奏できればいいのか、厳しくても頑張って練習して上を目指したいのか、話し合って決めてほしい」と子供たちに話をしました。

私としては、どちらになっても全力で指導するつもりでしたが、結果として、子供たちは頑張って挑戦する道を選びました。そこから少しずつ、部の雰囲気が変わっていきました。できない部分を互いに教え合い、練習にもより真剣に取り組むようになりました。

その結果、昨年は見事銀賞を獲得できたんです。半数以上が初心者だったのに、優秀な成績を収められたのは、子供たちのひたむきな努力の結果です。発表された瞬間は、嬉しくて思わず涙があふれました。

 

――部活動支援員の醍醐味は、どんなところにあると感じていますか?

子供たちの成長を肌で感じ、そばで見守れることです。私が教えられることは多くありませんが、微力でも役立てることに大きなやりがいを感じます。

私がかつてそうであったように、子供たちには部活動を頑張ることで、他のことにも自信をつけてほしいと考えています。楽器が上手く吹けることが日々の生活に役立つわけではありませんが、辛いことがあっても逃げ出さず、好きなことに一生懸命に取り組んだ体験は、大人になってから貴重な財産になるはずです。

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