カリスマ教師の履歴書

File.11 小柳 政憲先生(東京都国立市立国立第一小学校)

教師のエンジンは子供の成長そのためにも教材研究は全力で

「一生懸命は人に伝わる」という信念のもと、全力で子供と向き合う小柳政憲先生。子供が目をキラキラさせて臨む先生の授業力はどのように培われたのでしょうか。

 

カリスマ小柳先生 メイン

 

文・平野 多美恵

聞いてもらえるという安心感が
先生の話を聞く姿勢を作り出す

「はい! 先生!」

私を当てて!という力のこもった眼差しを小柳先生に向け、まっすぐ手を伸ばす4年生の子供たち。「詩を楽しむ」という国語の授業での一コマです。

「次は野原の住人になったつもりで、隣の人と会話をするよ。準備はいい? はい、スタート!」

小柳先生の号令の後、2人1 組で会話が始まります。中には、防災頭巾を背中に載せて、かたつむりになりきる子供の姿も見られます。1分後、どんな会話が出たか、発表です。子供たちは発表者の方をしっかりと見て、良いと思った発表には拍手が湧き上がります。

小柳先生は、授業ではみんなで考えを共有する段階を大事にしていると言います。

「授業は問題を把握する段階、自力で問題を解決する段階、みんなで発表し合ってさらに良いものに高める段階、まとめの段階という4段階を経て進みますが、3段階目のみんなでどう高めるかというのが一番難しく、そのため、教材研究の段階で詳細にイメージして授業に臨みます。」

どんな発言が出るか、どのような順番で発言させたら次につながるか、黒板にはどういうことが書かれていると子供たちは話しやすいか、どうしたら子供たちが自信を持って自分の意見を発表できるのか…。そうした細々としたことを若い頃には毎時間ノートに書いて授業に臨んでいたと小柳先生は言います。

「子供の成長は私たち教師のエンジンであり、エネルギーです。若い頃から教材研究をしっかり行い、子供の『分かった!』という笑顔をたくさん見ることが、私たち教師がガス欠にならないためにも大切です。子供が好きだと本気で思うなら、“分かる”授業をすること。それがプロというものです。」

そんな熱き思いを持つ小柳先生ですが、過去には崩壊した学級を受け持つことが多かったと振り返ります。教師の話を聞かなくなった子供というのは、コップに例えると裏返っている状態。まずは水が入る状態、先生の話が耳に届く状態をつくることが必要で、そのためには児童が聞きやすいよう、短いセンテンスで分かりやすく話すこと、そして教師自身が子供の話をよく聞くことが大切だと言います。

「出欠をとるとき、教師と目を合わせて返事をすることを最初に教えます。そして毎朝出欠を取りながら子供と目を合わせ、一言、『今日は素敵な目をしているね』とか、『もしかしたら昨日あまり寝てないんじゃない?』と言葉を掛けます。子供に話を聞いてほしいのなら、子供の話を最も聞いてあげる人にならないといけません。」

丁寧に児童との関係を築き上げ、集中して楽しめる授業を作り上げていくのが“小柳流”です。

 

楽しい時間を共有できる学級経営が
落ち着いたクラスを作る

 

教員である両親のもとに、休日になると教え子や卒業生が訪れる。そんな環境で育った小柳先生には、「慕われる先生像」が身近にありました。同時に、寝る時間を削って子供のために仕事をする親の姿も目の当たりにしてきました。子供のために一生懸命にやる。それは、小柳先生にとってごく当たり前のことでした。

初任校で初めて受け持ったクラスには、いじめられている子がいました。身体の大きな男の子でしたが、家庭環境が複雑で着ている服はいつも同じ。上履きも洗わないため、鼻を突く匂いがする。人懐っこいこの子をなんとか輝かせることができないだろうかと思案していた小柳先生は、わんぱく相撲大会が行われることを知り、クラスで出場することにしました。休み時間に皆で相撲の練習を重ね、いよいよ本番。すると、いじめられていた子が西多摩郡で優勝、両国国技館でも3位に入る健闘を見せたのです。子供たちも共に喜び、それ以来いじめはなくなったそうです。

「子供たちが一生懸命やれる空間を作れば、状況を変えられます。そして、それぞれが自分を出せる経験をして、楽しい空間を共有すると、仲間を大切にするようになります。そうした経験をすることで基準ができ、次の学年や中学校でその基準からのスタートをきることができ、そこから先の高いレベルを目指すことができるのです。勉強するにもロスがあります。みんなで楽しく過ごす経験をすること。子供が子供らしくいられる機会を作ること。教師がそれをやらないとしたら誰がやるのでしょうか。」

 

カリスマ小柳先生 サブ

 

伸びるときは飛躍的に伸びる
失敗を恐れずに全力で取り組んでほしい

力を抜かず、全力でやることで子供も保護者も周りの教師も協力してくれるようになる。初任校での経験から、一生懸命やることの大切さを実感したと小柳先生は言います。その後、30 代前半は、東京都算数研究会(都算研)に所属し、また東京都の算数の研究員にも選ばれます。さらに学校では生活指導主任を務め、雑誌に寄稿するなど多忙な日々を過ごしました。終電まで研究員のメンバーと討議し、電車の中で課題をこなし、帰宅後にその内容をまとめて翌朝出勤。疲れきってはいたけれど、一生懸命やることでしか状況を打開できないと考え、死に物狂いで取り組んだと当時を振り返ります。

「あの頃は本当に大変でした。でも、きついことを経験するとその分だけキャパシティは広がります。大変な経験も無駄ではなかったと今では思えます。」

研究員を経験したことも大きな転機になったと小柳先生は言います。「全教科のエキスパートになりたい」と思っていたところ、先輩教員から「一つを極めることで、他の教科にも波及する」と助言され、背中を押されたそうです。

「研究員をすることで、より深く教材研究ができるようになりました。教材研究が深ければ深いほど、子供たちの反応に対して、対応できる幅が広がります。子供は慌てた先生を見ると、『大丈夫かな?』という不安のストレスがたまるのでしょう。それが限界点に達したとき、先生の言うことを聞かなくなるのだと思います。何度も言いますが、教材研究は本当に大切なことです。」

現在は副校長として若い先生の指導にも当たっている小柳先生。最後に、教師を目指す人に向けてこうエールを贈ってくれました。

「教師に向いてないんじゃないかと誰もが感じる先生の中にも、1年、2年で急に伸びる先生がいます。しかも飛躍的に伸びるのです。だから、失敗を恐れずに一生懸命に全力で取り組んでほしいですね。上司や管理職に怒られても諦めないで立ち上がる先生が、子供に何かを伝えられる先生になるのだと思います。」

 

カリスマ小柳先生 顔
Profile
小柳政憲(こやなぎまさのり)
1968 年5 月15 日生

1991年3月 ……東京学芸大学卒業
1993年9月 ……西多摩郡瑞穂第五小学校に赴任
1997年4月 ……新宿区東戸山小学校に赴任
2005年4月 ……国立市立国立第三小学校に赴任
2012年4月 ……国立市立国立第一小学校に赴任(現職)

座右の銘

自分のなれる最高の自分になる

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