編集長コラム

黒板・チョークからランドセルまで学校特有のアイテムとその起源

学校教育は、時代とともにその形を変えてきました。過去30年ほどを振り返っても、以下のような変化を挙げることができます。

◯小学校低学年での「生活科」の導入
◯中高「家庭科」の男女共修化
◯「総合的な学習の時間」の導入
◯小学校高学年での「外国語活動」の導入
◯全国学力テストの実施
◯一部地域での「学校選択制」の導入
◯一部地域での「2学期制」の導入
◯習熟度別・少人数学習の普及

大人から見れば「へぇ〜。今の学校って、そんなことをしているんだ」と感心することも多いでしょう。

一方で、外見的な部分だけを見れば、その姿は30年前と大きくは変わっていません。新築された一部の学校を除けば、校舎の外観、教室のたたずまいは、ほぼ昔のままです。そのため、大人になってから小中学校を訪れると、懐かしい気分になります。

教室を見渡せば、一般社会ではあまりお目見えできなくなったノスタルジックなアイテムたちを目にすることもできます。今号は、そんな学校特有の設備・備品の“謎”に迫ってみたいと思います。

 

その1 黒板&チョーク

民間企業のミーティングで、黒板とチョークを使っている所はまずもってありません。最近は大学や専門学校でも、ホワイトボードが使われています。なのに、小中高校だけがなぜ“黒板+チョーク”というスタイルにこだわり続けているのでしょうか。

「学校の授業スタイルとして定着しているから」「安全で、子供でも扱いやすいから」など、いくつかの理由が挙げられますが、最大の理由は“コスト”です。チョークは、1本で相当量の文字数を書くことができ、折れてしまっても使い続けることができます。マーカーのように、キャップをし忘れて使えなくなることもありません。もし、全小中学校のチョークをホワイトボードに変更したとすれば、各自治体の教育財政に、少なからず影響を及ぼすことでしょう。

最近は、全国的に「電子黒板」の設置が進んでいますが、かといって従来型の黒板が撤去されているわけではありません。そう考えても、学校から黒板が消える日は相当先のことになるものと思われます。

ところで、黒板は緑色をしているのに、なぜ「黒板」というのでしょうか。実を言うと、明治時代の黒板はその名の通り黒色をしていました。しかし、「目が疲れる」「黒光りが反射して見にくい」「白と黒とで縁起が悪い」などの理由により、緑色へと改良が加えられていったのです。

その2 ランドセル

小学生のシンボルとも言えるランドセル。これが、学校教育において使われ始めたのは、いつ頃のことなのでしょうか。

ランドセルの語源は、オランダ語の「ransel」。西洋式の軍隊が使うリュックのことを指します。これが訛って「ランドセル」となったわけで、正式な外来語ではありません。日本に導入されたのは幕末期で、当時は専ら軍用として使われていました。

これが、子供の通学用に使われるようになったのは、明治時代中期のことです。当時の皇太子(後の大正天皇)が小学校へ入学する際、伊藤博文がお祝いとして送ったのがきっかけとなり、通学用カバンとして使われるようになりました。ただ、全国的に普及したのは第2次世界大戦後のことで、それまでは風呂敷や布製バックなどが主流だったそうです。

通学用カバンとしてランドセルが愛用され続けている理由は、まだ体の小さな小学生が重い荷物を運ぶ上で負担が小さいこと、両手が空くので安全なことなどによります。おじいちゃん・おばあちゃんの「入学祝い」として定番化していることを考えても、これが消える日は想像しにくいものがあります。

なお、京都や滋賀などの一部の市町村では、革製ではない、ナイロン製の「ランリュック」という製品の使用が指定されています。また、北海道の小樽市でも、同じくナイロン製の「ナップランド」という製品が広く使われています。いずれも軽量・安価な上に耐久性も良く、“ご当地ランドセル”として地元の小学生に愛用されています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAランリュック P139_2ナップランド

その3 学ラン・セーラー服

小学生のシンボルがランドセルなら、中高生のシンボルは「学ラン」と「セーラー服」でしょう。最近でこそ、ブレザーに切り替える学校が増えていますが、長く日本の中高生の制服として、愛用され続けてきました。

しかし、よくよく考えてみると、学ランの首の回りを筒状に覆う詰襟といい、セーラー服の大きな逆三角形の襟まわりといい、そのデザインはかなり奇抜です。これが、中高生の制服となったのは、どのような経緯があったのでしょうか。

その起源をひも解くと、いずれも“軍服”に遡ります。学ランが学校の制服として着られるようになったのは、明治中期頃です。近代ヨーロッパでは、軍人や官僚が詰襟の制服を着ていましたが、明治期にこれが日本の軍隊にも導入され、さらには大学生用、中高生用の制服として着られるようになっていきました。なお、「学ラン」の語源には諸説ありますが、江戸時代に洋服のことを「蘭服(オランダの服)」と呼んでいたことに由来するとの説が有力です。

一方のセーラー服は、海軍水兵(sailor)の制服が起源となっています。これを女子学生用の制服として最初に採用したのは、京都にある平安女学院で、1920(大正9)年のことでした。ただし、本格的に普及したのは第2次世界大戦後のことで、1980年代には映画や歌謡曲のタイトルにも使われるなど、女子中高生のシンボルとして定着していきました。

ちなみに、アメリカの人気キャラクター・ポパイも、よく見るとセーラー服を着ています。あのマッチョな男が、女子中高生と同じ服を着ているというのは、ちょっと不思議な感じがします。

このように、先生や児童生徒が使っている設備・備品等には、それぞれの“起源”があり、使われ続けている“理由”があります。調べてみるとなかなか興味深いものがあるので、皆さんも何か疑問に思うことがあったら、ぜひ探ってみてください。

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