映画・ドラマに学ぶ教育の本質

「パリ20区,僕たちのクラス」

2008年/フランス/128分
監督:ローラン・カンテ
原作・出演:フランソワ・ベゴドー
発売元:ミッドシップ
販売元:紀伊國屋書店
価格 :4,800円+税
©Haut et Court – France 2 Cinema

 

教師の苦悩も、そして魅力も、存分に味わえる教育映画

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

地域や学校により、教育にまつわる課題はそれぞれ異なります。どの学校に配属され、どのような児童生徒と向き合うかは、教師の学校生活(職業生活)を左右する最大の要因でしょう。しかし、概ねそれは自分では選ぶことができません。どこの地域、どこの学校に着任し、そこでどんな生活指導・生徒指導、そして学習指導をするかは、まさに「運命と偶然」に支配されるのです。

一方で、どの学校にも多様な児童生徒がおり、全力で向き合えば、教師としての力量は高まります。さまざまな生徒、さまざまな課題に対応する中で、自らの人間性をも高める、教師とはそんなやりがいある職業なのだとも言えます。

この映画に登場する教師や生徒たちの姿は、日本とは大きく異なります。しかし、教師・生徒間に流れる相互の感情、関係性は似ている部分も多く、憤りを覚えたり考えさせられたりします。

舞台は、フランスのパリ20区(実際は19区)の公立中学校。パリは中心部から1区、2区…と数えられ、 20区の郊外にあるこの学校は、生徒指導の面で多くの課題を抱えています。生徒たちは着席するまでに15分もかかり、注意されるまで帽子も取らず、教師が話し始めても一向に静かになりません。その一方で、話を聞いていないかと思えば、教師のちょっとした言い間違いや不適切な発言には喜々として反応し、指摘する。そんな14〜15歳の生徒たちの姿は、本質的には日本の子供たちとあまり変わりません。

そんな手強い中学生を相手に、着任4年目の国語科教師・フランソワは日々格闘します。24人の生徒は、移民の者も多く出身国や生い立ちもまちまちで、親の願いも本人の将来の夢もさまざまです。フランス語が話せない保護者も多く、生徒たちの言葉もスラングまみれ。そんな生徒たちに、国語教師のフランソワは正しく美しいフランス語を教えようと悪戦苦闘します。しかし、「文法的に正しいフランス語は金持ちの言葉」と反発され、文学にも歴史にも興味を持ってもらえず、いらだちから時に威圧的にもなります。それでも少しずつ生徒たちのことを理解するようになり、悩み、葛藤しながらも、真剣に生徒たちの言葉の力を高めようとします。未熟さからたびたび感情的になり、生徒との関係が悪化することもある中で、彼が何を学んでいったのか、共に考えたいところです。

どの国でも、14〜15歳の中学生は多感で、ある意味では素直で素朴です。母親には弱く、父親に反発しつつ逆らえず、楽しければ笑い、理不尽さには反発し、時に怒りを抑えきれず暴力的になったりヒステリックになったりする。そんなパワフルな生徒たちに、教師は否応なしに振り回されてしまいます。これは日本も同じであり、そうした様子がよく描かれた映画です。

ノンフィクションではないのにリアリティに満ちていて、数々の賞を受賞しています。教師の苦悩も、そして魅力も、存分に味わえる教育映画なので、ぜひご覧ください。

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