教師の本棚

『武士道シックスティーン』

P135

誉田 哲也=著
2010年/文藝春秋
¥640+税

 

剣道に向き合う2人の女子高生の物語

遠江 久美子(東京都町田市立鶴川第二中学校教諭)

私は『武士道シックスティーン』を読み終えて,主人公の1人である磯山香織が私の近くにいる気がしてなりません。出会ってみたい,こんな人と。そんな気持ちになりました。

この物語は,磯山香織と西荻早苗という対照的な2人が繰り広げる,剣道を中心とした青春小説です。勝利至上主義の香織と勝ち負けよりも自分らしい剣道を目指す早苗。香織の剣道に対する気持ちの変化が軸になっています。香織の変わっていく姿が何だか人間臭くて,「頑張れ」と応援したくなります。迷っている香織の「…ときには,回り道をしてでも,たとえ立ち止まってでも,見つけなきゃならない答えってものがある。それは,誰かに教えてもらうんじゃ駄目なんだ。自分で見つけないと意味がない」という言葉が,教員3年目の頃の私を思い出させました。

当時の私は仕事にも慣れ,同じ教科の先輩のやり方だけにとどまりたくない気持ちが大きくなっていました。伝統である体育祭のマスゲームの内容を,どうしても新しいものに変えたかったのです。でも「自分にはできるのか,できないのか,周りはどう思うのか,失敗したらどうするのか,やってもないのに諦めるのか,自分の力を試したくないのか,生徒はついてくるのか…」と深い深い悩みの海に落ちていきました。私は結局,挑戦することを選び,曲,使う手具,構成を1人でやり切りました。やり切って見えたことがありました。作品の出来・不出来はさておき,自分の「前に進む力」に少し自信が持てたこと,それと同時に,「やってみたらいいよ」と言ってくださった先輩教師の懐の深さと偉大さ,そして伝統作品の凄さにも,あらためて気付かされたのです。これからも教師としての私の挑戦は続きます。謙虚というお供と,磯山香織という助っ人とともに。

この物語の続編として,『武士道セブンティーン』『武士道エイティーン』『武士道ジェネレーション』があり,全部読み切ると,読者は心に確実に「メーン」を入れられます。覚悟あれ!!

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