映画・ドラマに学ぶ教育の本質

「フリーダム・ライターズ(Freedom Writers)」

 

2007年/アメリカ/123分  監督: リチャード・ラグラヴェネーズ  原作: エリン・グルーウェル
製作総指揮・主演 ヒラリー・スワンク(アカデミー賞主演女優賞受賞)
DVD発売:パラマウント ジャパン  価格:5,900円+税

 

仕事に愛された新米教師と、その生徒のノートが起こした教育の奇跡

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

教育の目指すものは何か――この問いに、あなたは何と答えますか?

「Education」の語源は「良さを引き出すこと」と言われます。私はこの映画を観て、「能力と可能性の育成」が教育の目指すものだと改めて知らされました。

1992 年4月下旬から5月上旬にかけて、アメリカ合衆国ロサンゼルスで大規模な暴動が発生しました。私は1990 年から毎年、夏季休業中に高校生を米国にホームステイさせるという仕事をしており、その関係で米国の教育事情にも多少精通していましたが、暴動の背景には人種問題、陪審制の問題、公民権運動の遅滞などさまざまな社会的問題があり、米国の学校も大変だと強く感じていました。

この映画はその暴動の2年後、1994 年のカリフォルニア州ロサンゼルス郊外のロングビーチにあるウイルソン公立高校を舞台に、新任英語教師エリン・グルーウェルとその生徒が英語科203 教室で過ごす日々を題材にした、実話に基づく感動の物語です。

肌の色が所属集団を分け、人種間の抗争も日常茶飯事、18 歳まで生きられるかどうかという暴力との戦いが放課後の生活という荒れ放題の高校で、1年生のクラスを受け持つ白人女性教師とその生徒たちが主役です。弁護士になるより人を変えることが必要だと思い、教師になったグルーウェル先生は、授業を受ける気などまったくない生徒たちを相手に、教材や授業の進め方に創意・工夫を凝らし、他の教員からの支援がない中、必死で取り組みます。

おそらく日本の学校で教師として赴任しても、これほど大変なことはないでしょう。しかし、最初の赴任校では多かれ少なかれ、自分が抱いている学校像や児童生徒像と現実のそれとの間にはギャップがあります。そういった観点からも、なかなか勉強になる映画です。

彼女は夫に支えられながら、教材にラップを取り入れるなどして、生徒を引きつける努力を重ねます。そんなある日、一人の生徒が黒人の生徒をバカにした絵を描きます。彼女はその絵を見て、第二次世界大戦のホロコーストが、この絵のような差別から生まれたのだと熱く語ります。しかし、生徒たちはホロコーストを知りません。そこでホロコースト関連する『アンネの日記』を教材として購入しようとしますが、学科長に予算がないと拒否されてしまいます。

そこで、グルーウェル先生は、毎日何でもよいから日記を書くようにと、生徒たちに1 冊ずつノートを配ります。日記なので点数はつけないと伝え、読んでほしい場合は鍵のかかる戸棚に入れるよう指示します。そして彼女は、生徒たちの置かれた厳しい家庭環境、日々の思いなどを知り、綴られたノートは大切な記録として蓄積していきます。

実は私もこの実践と同じようなことを国語科の授業の中で取り入れたことがありました。私の場合はノートに作文として何を書いてもよく、書いたページ数を評価するというシンプルなものでしたが、映画と同様にノートを通して多くの生徒たちの家庭や生活、そこから生まれる心の声と向き合うことができました。国語科のみならず、生徒と心を共有し、人を育てる授業づくりをしたいと考えるすべての教師に、この映画を勧めます。

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