『教セミ』連載 | 編集長コラム

臨任,実踏,板書… 学校特有の略語と業界用語

「CS」と聞いて何を思い浮かべる?

新聞や雑誌を読んでいると,アルファベットの略語が多いなとつくづく思います。今年の主要ニュースをざっと眺めてみても

「ISによるテロ事件」

「韓国でMERSが流行」

「TPPの妥結を大筋合意」

など,アルファベットの略語が多用されていることが分かります。古くから「GHQ」や「NHK」,「WHO」などが使われてきたものの,ここ最近の出現頻度は,10〜20年前の比ではないでしょう。

こうして,アルファベットの略語が増えたことにより,重複も少なからず出てきています。例えば「CS」と聞いて,皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

最も多いのは,「CS 放送」ではないかと思います。「Communications Satellite」の略で,「スカパー」等の普及とともに,多くの人に浸透していった略語です。

あるいは,ビジネスマンであれば,「顧客満足(Customer Satisfaction)」の方が馴染み深いかもしれません。営業のプレゼン資料等には,頻繁に使われる略語です。

デザイン業界の人なら, きっと「Creative Suite」というAdobe社のアプリケーションを挙げるでしょう。一般の人々には馴染みが薄いですが,このアプリに含まれる「Photoshop」や「Illustrator」などは,聞いたことがある人も多いと思います。

その他にも,プロ野球の「クライマックスシリーズ」,競馬の「チャンピオンシップ」などがありますが,教育界にも「CS」と略される用語があります。約10年前に制度化された,地域住民の声を学校運営に反映させる仕組みのことです。教員採用試験を受ける人なら即答してほしいところですが,一般の人には馴染みが薄い略語かもしれません。

 

学校でしか使われない略語の数々

教育界の「CS」と言えば,「コミュニティ・スクール(Community School)」です。まだ,全公立学校の1割にも満たないことから,日常会話に出てくることは少ないですが,今後その数が増えていけば,学校特有の略語として定着する可能性もあるでしょう。

こうした学校特有の略語は,アルファベット以外にもたくさんあります。例えば,「実踏(じっとう)」という略語。一部地域の学校ではよく使われますが,一般の人には知られていません。修学旅行や遠足の訪問地を事前に教師が訪れること,すなわち「実」際に足を「踏」み入ることを指す言葉です。意味的には「下見」に近いですが,児童生徒の行動をシミュレーションしながら行う点で,下見よりもやや業務的要素が強い言葉と言えます。

「臨任」「臨採」も,学校ではよく使われる略語です。いずれも「臨時的任用(採用)教員」のことで,正規採用とは別に,期限を区切って臨時的に採用される教員のことです。

教員にとって身近な書類である「週案」も,一般の人の多くは聞いたことがないでしょう。「週」あたりの指導計画「案」のことで,これを記入する用紙を「週案簿」と言ったりします。

「板書」であれば,一般の人も聞いたことがあるかもしれません。黒「板」にチョークで文字を「書」くことですが,これをいかに進めるかは,教師の腕の見せ所の一つ。「板書計画」という言葉も存在します。

その他にも,「初任研」(初任者研修)や「副担」(副担任),「特支」(特別支援学校),「T・T」(ティーム・ティーチング)など,学校では多くの略語が使われています。もちろん,略語や業界用語が飛び交うのは学校に限った話ではありませんが,他業界に比べても,その数は多いと言われています。

また,一般的な用語が,学校ではやや異なる意味で使われているケースもあります。その一つが「出張」です。民間企業では,新幹線や飛行機を使って遠方へ出向くことを指しますが,学校では近隣に出掛けることも「出張」と言います。学校に電話をして「○○先生はいますか?」と聞くと,「午後から出張に出ました」と言われることがありますが,必ずしも遠方に行ったとは限りません。行き先は1キロも離れていない近隣校で,夕方には戻っているなんてこともあります。「そりゃ“外出”だろ!」と突っ込みたくなる人もいると思いますが,少なくとも学校では,業務で自校を離れる場合はすべて「出張」と表現されるのです。

ちなみに,ローカル限定の学校用語というものもあります。例えば,北海道の高校では,1学年あたりの学級数を「間口」と呼んでいます。一般的には,建物入口の幅を表す言葉が,なぜ学級数を表す言葉に転用されたのか,ちょっと興味深いところです。
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専門用語が誤解・トラブルを生むことも

その昔,民間企業から赴任した校長が,「板書」という言葉の意味を知らなかったがゆえに,周囲の教員から小馬鹿にされたという話があります。きっとその校長は,日々飛び交う難解な専門用語の数々に,四苦八苦したことでしょう。その業界では当たり前に使っている用語が,外側にいる人間から見れば当たり前ではないというケースは少なくありません。

そうした認識の相違が,時にトラブルにつながってしまうことがあります。例えば,通知票の成績に納得がいかない保護者に,ある先生が「観点別評価では,定期テストの点数が必ずしも通知票の成績にそのまま反映されるわけではない」と説明したとします。学校の先生からすれば,これで十分に伝わったと思うでしょうが,保護者からすれば「観点別評価」の意味が,まずもって分かりません。中には,「難解な専門用語で煙に巻かれた」と不快に感じてしまう人もいるでしょう。

民間企業のクレーム対応では,「専門用語や社内用語を使わないこと」が鉄則の一つとされ,良いオペレーターは分かりやすい「お客様用語」に置き換えて説明すると言われます。これも,顧客と良好な関係を維持し,継続的にお付き合いしてもらう(商品を買い続けてもらう)ための知恵の一つなのでしょう。

学校の先生もそうですが,業界人と呼ばれる人たちは,その言葉が外部の人に通じるものなのかどうか,その都度立ち止まって考える必要があるのかもしれません。私自身が身を置く出版業界にも「ノンブル」「色校」「台割」など多くの業界用語があるだけに,注意しなければと思った次第です。

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