『教セミ』連載 | 映画・ドラマに学ぶ教育の本質

「コーラス」

2004年/フランス/97分
監督:クリストフ・バラティエ
キャスト:ジェラール・ジュニョ/ジャン=バティスト・モニエ/ジャック・ペラン/フランソワ・ベルレアン 他

 

“合唱”をテーマに,教職の本質を描いた作品

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

日本では,ほとんどの学校に「合唱コンクール」があり,概ね2学期から3学期にかけて行っているようです。学校にもよりますが,大いに盛り上がり,児童生徒も楽しみにしている,運動会と並ぶ日本独特の学校行事です。反面,学級をまとめていく過程で,教師が苦労することの多い行事でもあります。「歌わない」「そろわない」「一部やる気のない人がいる」などの問題が次々と出てくるなど,児童生徒が主体的に取り組まないと対応に苦慮します。一方,担任にとっては腕の見せ所であり,気合が入る行事でもあります。

多くの教師が,合唱コンクールを経験することで,学級集団の力や担任としての力量が問われることを痛感します。そんな教師と児童生徒の気持ちのつながりを描いた作品を今回は取り上げました。

舞台は戦後間もない1949年頃のフランスです。高名な音楽家で指揮者のピエール・モランジュは,母が死去したとの知らせを聞き,故郷に戻ります。そこで,同級生だったペピノに会い,孤児や問題児を集めた寄宿舎,その名も「Fond De L’Étang(池の底)」での日々を回想します。

ある日,マチューという一人の音楽教師が,この寄宿舎の舎監の職としてやってきます。マチューはイタズラを繰り返す生徒や「やられたらやりかえす」とばかりに厳しい規律で生徒を管理するラシャン校長と体育教師のシャベールに,大きな戸惑いや違和感を覚えます。そんなある日,彼は音楽家としての経験を生かし,生徒に音楽を教えることを思いつきます。校長の反対にもめげず,生徒たちに合唱を教え始めるマチュー。そして,反抗的な問題児として見られているモランジュが,奇跡のような「天使の歌声」を持っていることを知り,ソロでソプラノを歌う練習をさせます。

映画には,さまざまな問題や課題を持つ少年が登場しますが,彼らに音楽やコーラスの楽しさを教える中で,少しずつ寄宿舎の雰囲気が変わり始めます。しかし,物事がそう簡単に運ぶわけではありません。この点は,現実の学校生活でも同じです。複雑な家庭環境や成育歴を持つ児童生徒の思いや感情を,自らの感性や技能で切り開き,人生に新たな光を与えようとする。そんな教師の営みの姿がきちんと描かれ,教師という仕事について思いをはせることでしょう。

子供は大人になるための準備段階,という捉え方もあります。しかし,子供には,その時だけに輝く「天使のような何か」があるかもしれません。そんな可能性や未来からの光をしっかりと受け止め,それを見つめさせ,保護者にも周囲にも理解させること。これが教師の姿であり魂だろうと,強く感じさせてくれる作品です。

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