学校不祥事の顛末

出会い系サイトで児童買春

【今月の事例】
出会い系サイトで児童買春
A県教育委員会は,児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で逮捕されたB市立C中学校の男性教諭(29)を懲戒免職処分にしたと発表した。
県教委によると,男性教諭はインターネットの出会い系サイトで知り合った児童が18歳未満だと知りながら,現金3万円を渡してB市内のホテルでわいせつな行為をした。既に罰金40万円の略式命令が出され,納付したという。

 

【法律家の眼】

児童買春を規制する法的枠組みと
犯した者の「罪」と「罰」

弁護士 樋口 千鶴(上條・鶴巻法律事務所/東京都教育委員会公益通報弁護士窓口)

 

1 出会い系サイトと犯罪被害の現状

児童生徒に広く携帯電話,スマートフォンが普及したことにより,出会い系サイトやコミュニティサイトに起因した被害事例が報告されています。
警察庁によると,平成26年上半期,出会い系サイトに起因する犯罪被害に遭った児童は82人,コミュニティサイトに起因する犯罪被害に遭った児童は698人です。平成20年に「出会い系サイト規制法」の改正があったことの影響で,出会い系サイトに起因する被害児童数は減少傾向にある反面,コミュニティサイトについては平成25年上半期以降,無料通話アプリのIDを交換する掲示板による犯罪被害が増加傾向にあるとのことです(以上「平成26年上半期の出会い系サイトおよびコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について」平成26年9月18日警察庁広報資料より)。
本事例はこうした出会い系サイトを利用した児童買春という犯罪行為であり,刑事罰を受けているほか,懲戒免職という公務員として最も重い処分も受けています。教職にある者がこうした罪を犯すことが社会的に許されないことは言うまでもなく,実名で新聞報道されるなどの社会的制裁を受けることも予想されます。

 

2 児童買春に関する法律
(1)児童買春・ポルノ法
正式名称は「児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」と長いため,一般には「児童買春・ポルノ法」といった略称で呼ばれます。
同法でいう「児童」とは「18 歳に満たない者」をいい(第2条第1項),「児童買春」とは児童他に対し「対償を供与し,又はその供与の約束をして,当該児童に対し,性交等(性交若しくは性交類似行為をし,又は自己の性的好奇心を満たす目的で,児童の性器等(性器,肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り,若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。)をすること」を言います(同条2項)。このように,児童買春は性交そのものに限られるのではなく,上記記載のわいせつ行為まで広く含む定義づけをされています。

 

(2)罰則
児童買春に対しては,以下のとおり懲役刑を含む重い罰則が科せられます。

児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律
(児童買春)
第4条 児童買春をした者は,5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。

 

3 「児童」だと知らなかったという弁解が通るか
例えば,この男性教諭が「まさか18 歳未満だとは思わなかった」と弁解したらどうでしょう。確かに「児童」であること,すなわち18歳未満であることを知らなかった場合は児童買春が成立しません。しかし,出会い系サイトで知り合った経緯,児童の風貌,児童との会話内容,その他諸々の事情を総合した場合,「知らなかった」という弁解が通るかどうかは少し考えれば分かることのように思います。

 

4 児童の尊厳
暴行や脅迫を手段としているわけではないため,罪の意識が薄いケースがあるかもしれませんが,大人が児童の未熟さに乗じて出会い系サイト等を利用して買春をすることは,成長の過程にある児童の尊厳を踏みにじる行為に他なりません。人として尊重し合い,互いの尊厳を傷つけないよう教えるのが教職であり,教員の児童買春に厳罰が課されるのは当然です。「こうした行為をしない・させない」よう自らを律し続けていただきたいと思います。

 

【教育者の眼】

わいせつ事件の影響
当事者への処分とその後

濱本 一(共栄大学教授/前埼玉県教育局市町村支援部長)

 

■わいせつ事件が及ぼす学校教育全体への影響

今回の事例は,出会い系サイトを通じた児童買春であり,いかなる理由があろうと許されない犯罪行為です。ましてやこの事例は,18歳未満であることを承知の上で及んだ行為であり,全国で日々子供たちの健全育成に取り組んでいる教師たちの信頼を,著しく損なう行為と言わざるを得ません。
こうした事件が起こる背景には,幾つかのパターンが挙げられます。その一つは,「誰にもばれなければ(ばれないだろうから)大丈夫だろう」という考えに基づき,出会い系サイトを通じて児童買春に及ぶなどのパターンです。一方で,教え子とLINEなどのアプリで個人的に連絡を取り合ううちに,いつのまにか私情を抑えられなくなってしまうなどのパターンもあります。
こうして逮捕された教師からは,よく「欲望を抑えきれなかった」などの言い訳が聞かれます。しかし,いかなる釈明をしようとも,教育を司る教師がこうした行為,性犯罪に及ぶことは断じて許されないことであり,強い憤りを覚えます。
一般市民や保護者の方々は,こうした事件をどのように受け止めるのでしょうか。多くの人が,そうした教師に対し「教壇に立ってほしくない」「我が子を教えてほしくない」と思うに違いありません。そうした厳しい世間の目は,やがて身近な教師への信頼低下,さらには学校教育そのものへの信頼低下にもつながっていきます。

 

■わいせつ事件を起こした教師の顛末

わいせつ事件を起こした者に懲戒処分が下されるのは当然であり,本事例も任命権者である都道府県教育委員会が,懲戒免職の処分を下しています。

地方公務員法
(懲戒)
第29条  職員が次の各号の一に該当する場合においては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処分をすることができる。
一  この法律若しくは第57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例,地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違
反した場合
二  職務上の義務に違反し,又は職務を怠つた場合
三  全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

 

性犯罪を犯した教師には「懲戒免職」の処分が下されますが,教員免許状がどうなるのかについても確認をしておきましょう。

・教育職員免許法
(失効)
第10条  免許状を有する者が,次の各号のいずれかに該当する場合には,その免許状はその効力を失う。
一  略
二  公立学校の教員であつて懲戒免職の処分を受けたとき。
三  略(授与)
第五条  普通免許状は…(略)…に授与する。ただし,次の各号のいずれかに該当する者には,授与しない。
一~四  略
五  第10条第1項第二号又は第三号に該当することにより免許状がその効力を失い,当該失効の日から3年を経過しない者
六~七  略。

 

このように,懲戒免職となった教員は,免許状そのものまで失効してしまいます。わいせつ行為は自らの人生を棒に振り,学校教育全体の信頼を損ねる行為であることを,教師を目指す人は強く認識してください。

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