『教セミ』連載 | Professional の仕事

第6回 学校薬剤師 井上 優美子 さん

教育活動に関わるのは教師だけと思っていませんか?学校は実にさまざまな人たちの支えによって成り立っているのです。「チーム学校」の一員として子供たちの健やかな学びを支える人々に、話を伺いました。

・黒澤 真紀

Professionalの仕事 井上優美子さん

井上 優美子(いのうえ・ゆみこ)さん
東京都出身。薬学部を卒業後,薬剤師として国立衛生試験所(現:国立医薬品食品衛生研究所)に勤務。結婚,出産を機に,実家の薬局で勤務するようになる。1979年から学校薬剤師を兼任。以後,1994年に東京都学校薬剤師会理事,2008年に同副会長を経て2010年に会長に就任。2011年に一般社団法人東京都学校薬剤師会に移行し,現在も会長を務める。

 

――井上さんが学校薬剤師になられるまでの経緯を教えてください。

父が薬剤師をしておりまして,実家が薬局だったんです。その影響もあり,自然と薬剤師を志すようになりました。薬剤師の国家資格を取り,薬科大学を卒業してからは国立衛生試験所(現:国立医薬品食品衛生研究所)に勤務していました。

その後,結婚後いったん家庭に入りましたが,子供が幼稚園に入ったのを機に,実家の薬局を手伝うようになりました。父は80歳後半まで学校薬剤師をしておりました。1979年より私も学校薬剤師になりました。

現在は一般社団法人東京都学校薬剤師会の会長をしております。2011年に全国に先駆けて一般社団法人化したのが最初の大きな仕事の一つでした。これにより,社会的信頼も得ることができます。今後,より積極的な活動ができる土壌ができたと思っています。

 

――学校薬剤師になるために必要な資格や条件はあるのでしょうか?

学校薬剤師という名のとおり,薬剤師免許が必要です。学校薬剤師は非常勤公務員として教育委員会の委嘱を受け,学校で学校薬剤師の仕事をしています。普段は薬剤師として薬局などに勤務し学校薬剤師の仕事がある日は,スケジュール調整をして学校へ行きます。

 

――学校薬剤師には,どのような資質が求められますか?

どのような職場でも責任感を持って仕事をすることが大切ではないでしょうか。校長・副校長・養護教諭と接することが多く,検査結果をもとに指導・助言することもあります。例えば「教室の二酸化炭素濃度が高いので,休み時間は窓を開けて換気しましょう」などで,他にもたくさんあります。

 

――学校薬剤師の具体的な仕事内容について教えてください。

学校薬剤師の具体的な仕事内容は,文部科学省の「学校環境衛生管理マニュアル」に定められている通りです。その中の「学校環境衛生活動」というのは,「日常点検」「定期検査」「臨時検査」の3つの柱で成り立っています。「日常点検」「定期検査」では,教室の換気や温度の状態が適切かどうかを調べたり,飲料水の水質をチェックしたりします。また,ネズミや害虫がいないか,プール開きの前には水質や設備に不備はないかなども確認します。一方の「臨時検査」では,必要があるときに必要な項目を検査します。増改築・災害時,学校側から急きょ相談があったり,対応を求められたりしたときなどです。

 

――学校薬剤師は,1人1校体制で配置されているのでしょうか。

1校に1人が理想ですが,1人の薬剤師が複数校を担当することもあります。私は現在,公立小学校1校,特別支援学校1校を担当しています。ちなみに東京都では,2012年度から利島,2013年度から父島と母島,2014年度から新島と式根島で,学校薬剤師が配置さ
れるようになりました。離島の場合は,行ったり来たりが頻繁にできないので,1週間まとめて日程をとり,集中的に検査することもあります。もちろん,緊急の場合は,その都度対応します。

 

――学校薬剤師自身が,授業等の教育活動に携わることはあるのでしょうか。

医薬品に関する教育が,中学校では新たに取り上げられ,高等学校は充実が図られました。学校薬剤師の活用も言われています。くすりの教育は,小学校でも特別活動の時間などで講義が行われることもあり,私もゲストティーチャーとして話をすることがあります。小学生には「薬は,兄弟姉妹間でももらったらダメですよ。薬の袋に名前が書かれている人だけが飲んでいいんですよ」などと,薬の正しい服用法を教えたり,薬物乱用防止の話をしたりしています。

P127_2「子供たちと直に話ができるのが何よりも楽しい」と話す井上さん。
講演活動では,薬の正しい服用法やドラッグの恐ろしさを子供たちに伝えています。

 

――学校薬剤師の1日,1年間のスケジュールはどのような感じなのでしょうか。

学校薬剤師のほとんどが薬局勤務をしているので,例えば午後からプールの水質検査がある日は,それに合わせて職場のスケジュールを調整します。学校薬剤師の中には,薬剤師の資格を持った家庭の主婦もいるので,そうした方は各家庭の都合をつけて,学校へ出向いています。年間を通じての活動としては,さらに学校の理科室の薬品の検査,給食室の検査や施設・設備の衛生状態,騒音レベルの検査など細かい内容が数多くあります。いつ,何をするかは学校によって異なるので,年度の最初に学校側と年間の計画を立て,それを基にその都度具体的な日にちを決めています。

 

――学校薬剤師の仕事の醍醐味は,どのようなところにあると感じていますか?

児童生徒が1日のうち半分以上を過ごす学校の環境を整え,快適な学習環境を作る手助けをしていることにやりがいを感じます。また,薬物乱用防止教育・くすりの正しい使い方教室・たばこの害・お酒の害など,児童生徒に話す機会が増え,素直な子供たちの感性・学習意欲に触れられることもやりがいの一つになっています。自分を大切にしながら健康で健やかに成長していくよう,環境面,精神面,知識面でのサポートを今後も続けていきたいと思っています。

 

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