カリスマ教師の履歴書

File9 成田 弥生先生 (東京都小平市立小平第九小学校)

絶対に諦めない,信じぬく
強い決意で児童の成長を支える

どんなときも自分がやれることに集中し,ベストを尽くす成田弥生先生。児童の可能性を信じ,諦めない強い気持ちと高い指導力をどのように身に付けられたのでしょうか。これまでのキャリアについてお話を伺いました。

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文・ 平野 多美恵

 

自分のできることに集中し困難を打開した新任時代

現在,研究主幹教諭として,小平第九小学校の授業力向上に取り組む成田弥生先生ですが,新任時代は「自分は教師に向いてないのではないか…」と悩む日々だったと言います。

「採用が厳しい時代でしたので,赴任した学校は大規模校にもかかわらず,私が10 年ぶりの初任者でした。赴任初日は何をしてよいのか分からず,周りの先生の様子を見て,新しいクラスの名簿を作らなければならないことに気付くような状態で,右も左も分からないまま新学期を迎え,3年生を担任しました。」

当然,指導力はベテランの先生とは比較にならないほどの差があり,授業準備も追いつかず…。教師というより児童に近い感覚が残っていたため,「気をつけ」「並びなさい」といった指示語に抵抗を感じてしまう状況で,半年後には「自分に教師は向かない,辞めたいと思った」と言います。ですが,担任としてせめて1年間は責務を全うしなければと歯を食いしばりました。

「つらい1年でしたが,笑顔だけは一番でいよう,どんなことがあっても子供に対しては心を尽くそうと決めました。笑顔でいると子供たちは離れていかないんです。子供たちと心を通わせることができると,もう少し続けようかな,という気持ちが湧いてきました。」

そうして3年が経つ頃には,教師という仕事について「成長したいという子供の気持ちに寄り添える素晴らしい仕事」と思えるようになったと成田先生は振り返ります。

 

児童の成長が,諦めずに
頑張り続けた自分への一番のご褒美

その後,自身の出産と育児を経験したことで,子育ての大変さと保護者の気持ちが分かるようになり,ますます教師という仕事にやり甲斐を感じるようになったと成田先生は言います。そんな時,転機となる出来事がありました。前年度に学級崩壊状態となった5年生の学級を担任することになったのです。予想通り,当初は教室の電球を外す,金魚鉢に牛乳を入れて死なせてしまう,「うざい」「バカ」「死ね」が教室に飛び交う…そんな状態が続き,「完全に自分のキャパシティを超えていた」と言います。

しかし,成田先生は諦めませんでした。「2年後に最高の卒業式を迎えましょう!」と目指すクラスの姿を子供たちに語り,「鏡と同じで言葉は自分に返ってくる。人を傷つける言葉は自分も傷つける」と,まずは言葉遣いを改めるよう心をこめて何度も伝えました。もちろん丹念に教材研究を行い,子供たちを惹きつけるような面白い授業も心掛けました。

そして最も大事にしたのが,子供を褒めることでした。上辺だけ褒めても子供は見抜いてしまうので,小さな変化も見逃さず,言葉にして伝えました。特に活用したのが学級新聞です。翌日の予定や持ち物,宿題をプリントしたものに,児童一人一人に宛てて,変化や成長を褒めるメッセージを書きました。受け取った子供はその日の5行日記を記入し,保護者もコメントを寄せて翌日戻します。

「先生は30 人分頑張ってコメントを書くから,みんなもこの1枚だけは頑張って」と伝え,毎日記入して提出するよう指導。これにより,「先生はあなたを見ている」というメッセージが子供に伝わり,保護者とも心が通じ合うようになったと成田先生は言います。宿題の提出率も100%になりました。

さらに,“仲間はずれ”を見つけたときには,放課後に一人一人と個別に話をし,仲間はずれにされている子には絶対味方になることを伝えつつ,している子からはそうした行為に走る背景や思いに耳を傾けました。「人間だから好き嫌いはある。でも,相手の立ち位置を守ってあげることが大人になるための第一歩」と伝え,粘り強く指導していきました。

6 年生の後半には,行事にも進んで取り組むようになり,学力も伸び,落ち着いて教師の話を聞けるまでに成長しました。そして2年後には目標どおり,最高の卒業式を迎えることができたのです。

「持てるエネルギーの95%を学校で使い果たし,抜け殻のようになって保育園へわが子を迎えにいく。そんな2年間で,何度も心が折れそうになりました。でも,対話を繰り返していくうちに,どの子も薄皮をはぐように,少しずつ,少しずつ成長していきました。子供の可能性を信じることの大切さを教えられました。」

この学級での経験が,成田先生の教師としての原点になったそうです。

 

カリスマ成田先生 サブ

 

頑張った分,人の幸せに関わることができ,
自分の成長にもつながる仕事

成田先生は平成26 年度文部科学大臣優秀教職員として表彰されました。8年間にわたる特別支援教育コーディネーターとしての活動が評価されたのです。

「コーディネーターになった時,自分に何ができるか考えました。支援が必要な場合は関係機関を紹介し,つなげるのが役割の一つですが,一番はお母さんの悩みや気持ちを聞いて安心してもらうこと。そして,より良い選択肢を一緒に考えていくことだと思いました。」

頑張っているお母さんを尊重しながら,その子を輝かせるには何をするのが一番良いのか考え,できる限りの努力をしたと言う成田先生。その姿勢は研究主幹教諭となった今も変わりません。3年生から算数科で習熟度別授業を実施している小平第九小学校では,研究授業を行う際には指導案を基に実際に板書づくりをしながら教員同士で検討します。加えて成田先生は,授業でのやり取りを想定した「授業マップ」を作成し,より授業がイメージしやす
い資料を作って検討しているそうです。

「以前,授業が上手な先輩に授業がうまくなる方法を聞いたところ,『チャレンジャーであること』と言われました。研究授業へのチャレンジは大変ですが,悩みながらもより良い物を追求していく。それにより新しいものが生まれたり,授業が上手になったりするのだと思います。」

子供との関わりで大切なことは「信じぬく・ありのままを受け入れる・励ましぬく・どこまでも支える・心をつなぐ」ことだと成田先生は言います

「子供に尽くし,子供が成長した分,自分も成長させてもらえる素晴らしい仕事です。読者の皆さんにも覚悟を持って,ぜひ,教師になってほしいですね。」

 

カリスマ成田先生 顔

Profile
成田弥生(なりたやよい)
2 月18 日生
1990年3月 …… 大学卒業
1990年4月 …… 東京都の小学校に赴任
2005年4月 …… 東京都小平市立小平第九小学校に異動(現職)

趣味・特技
創作料理,映画鑑賞

好きな言葉
最も幸せな人とは人に尽くせる人である

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