『教セミ』連載 | 編集長コラム

「鍋ぶた」と「ピラミッド」 民間企業と学校の組織体制の違い

「偉い」のはどっち?

数年前、ある友人が私にこんなことを聞いてきたことがあります。

「課長と部長って、どっちが偉いんだっけ?」

その友人は、フリーランスのクリエイター。民間企業に勤めた経験がなく、会社という組織がどんな仕組みになっているのか、よく知りません。

「部長だよ。普通はね。」

そう返したところ、「それじゃあ、次長と課長では?」と聞かれ、今度は答えに窮してしまいました。この辺は会社や組織によっても違ってくるでしょう。

規模の大きい企業は、「社長」の下に「副社長」がいて、さらには「専務」や「常務」がいます。これらの役職は「取締役」と言われ、会社経営の根幹に関わります。

取締役会の下には「局」があり、その下に「部」、その下に「課」、その下に「係」があります(組織によっては「局」がなかったり、「課」や「係」がなかったりします)。それぞれに部門長がいて、それぞれ「局長」「部長」「課長」「係長」と呼ばれています。

ちなみに「次長」とは、セクションの「ナンバー2」を意味し、一般的には部長の次であることが多いですが、課長の次というケースもあるようです。漫才師に「次長課長」というのがいますが、「この二人では、どちらが偉いの?」という質問に、明確な答えを示すことはできないのです。

ただ、「局→部→課→係」という序列だけは、ほぼ共通しています。これは役所などの公務員組織も同じで、例えば文部科学省には「初等中等教育局」の下に「教育課程課」や「教職員課」などがあり、それぞれの下には複数の「係」があります。こうした組織体制は、都道府県や市区町村の教育委員会を見ても、ほぼ共通しています。

 

「鍋ぶた型」と呼ばれる学校組織

これら民間企業、役所などの組織体制は、一般的に「ピラミッド型組織」と呼ばれます。社長を頂点として、局長、部長、課長、係長、一般社員…と職位が下がるにつれて人数が増え、裾野が広がるからです。一定役職以上は「管理職」と呼ばれ、ある程度の権限が与えられる代わりに、責任を負います。こうして組織の節目ごとに管理職を置き、権限と責任を分散させることで、組織全体を有機的に機能させるのが、「ピラミッド型組織」の特徴と言えます。

一方で、これとはまったく異なる組織体制を敷いてきたのが学校です。学校の中には、職員が100人規模に上るところもありますが、「ピラミッド型組織」の「部長」や「課長」に当たる中間の管理職がいません。頂点に「校長」がいて、その下に「副校長」あるいは「教頭」がいるものの、管理職はこれだけ。基本的な職位は横並びに近い状況があります。

こうした学校の組織体制は、「鍋ぶた型組織」と呼ばれています。校長と副校長(教頭)だけが飛び出ていて、他は横並びという形状が、鍋のふたに似ているからです。

1月号1C 1106 110ちなみに、校長・教頭による2トップでの学校経営は明治期から続いてきたものですが、長らく教頭の位置付けはあいまいなままでした。管理職として法制化されたのは1974年のことで、それ以前、制度的な管理職は校長だけでした。鍋ぶたも、より柄の部分が短い形状だったわけです。

余談ですが、1941年以前は、教頭のことを「主席訓導」、教員のことを「訓導」と呼んでいた時期があります。「主席訓導」とは何ともいかめしい名称ですが、訓導の中の「主席」、すなわち教諭の中の「頭」という意味です。そう考えても、教頭は校長よりも教員寄りのポジションだったことが分かります。

 

変わりつつある学校組織

なぜ、学校は民間企業と異なる「鍋ぶた型組織」を敷いてきたのか、それは教師という仕事が分業化されていることと関係しています。

民間企業では、一つのプロジェクトを進める際、部長や課長の指揮の下、チーム内のメンバーがこまめに連絡を取り合い、互いの動きをよく見ながら行動します。それに比べると、教員の仕事は、かなりの部分が個々人に委ねられています。運動会や音楽会などの行事は別として、授業という中心となる仕事については、その大半が個々の裁量に任せられているのです。

教師には「職人気質」な「一匹狼」が多いなどと言われますが、背景にはさほど周囲と連携を取らずとも仕事が遂行できるという、職務上の特性があったのでしょう。

しかし、時代は変わり、近年は学校も「チーム」として動くことが求められるようになってきました。その昔、いじめや不登校、学級崩壊などがあっても、ややもすれば「隣のクラスのことは知らない」として、対応は個々の教員に任せられがちでした。しかし、近年は「問題があったら学校全体として対応し、説明責任を果たすべきだ」との論調が高まり、組織的に動くことが求められるようになってきたのです。こうなると、教員が「職人気質」な「一匹狼」でいるわけにはいきません。

その結果、組織体制を「鍋ぶた型」から「ピラミッド型」に近づけ、中間の管理職を置いて「チーム」として動けるような仕組みが、学校にも整えられるようになりました。2005年には、教頭よりも少し権限の強い「副校長」を置けるようになり、自治体によっては教頭から副校長への切り替えが進んでいます。また、2008年には中間管理職となる「主幹教諭」や「指導教諭」も置けるようになりました。すなわち、民間企業の「社長-副社長-部長-課長-一般社員」に当たる、「校長-副校長(教頭)-主幹教諭-指導教諭-教諭」のマネジメントラインが築かれるようになったわけです。

とはいえ、副校長や主幹教諭、指導教諭は「置くことができる」という「任意設置」の規定のため、すべての自治体に置かれているわけではありません。関東地方を見ても、東京都や横浜市が「副校長」を置いているのに対し、埼玉県や千葉県などは基本的に「教頭」のままです。

教員採用試験を受ける人は、自分が受験する自治体がどうなっているかを知るとともに、自らも「チーム」の一員であるという認識を持っておくようにしましょう。

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