『教セミ』連載 | 学校不祥事の顛末

部活動における女性生徒へのわいせつ行為

【今月の事例】
部活動における女性生徒へのわいせつ行為
A市立中学で女子生徒2人に対し、上半身を裸にして背中に患部固定用のテープを貼り、写真を撮影したとして、A市教育委員会は同校の50代男性教諭を懲戒免職とした。また、監督責任などがあったとして、校長を減給、教頭や市教育長らを文書訓告とした。
市教委によると、男性教諭は6月初旬と7月初旬、顧問を務める部活動の女子生徒を上半身裸にさせ、前後から携帯電話やデジタルカメラで撮影。背部の肩から腰にかけてテープを貼り、再度写真を撮った。男性教諭は「腰痛を訴えて部活の練習を休んでいたため、テープを貼った。効果が分かるように撮影した」などと話し、わいせつ目的を否定しているという。

 

【法律家の眼】

増加する教職員のわいせつ行為
身勝手な「言い分」と児童生徒に残す心の傷跡

弁護士 樋口 千鶴(上條・鶴巻法律事務所/東京都教育委員会公益通報弁護士窓口)

 

1 わいせつ関連の不祥事

今回の事案はわいせつ行為に対する処分事例ですが、実は、こうした不祥事は増加傾向にあります。文部科学省が全国の教育委員会に対して調査したところによると、2013(平成25)年度における「わいせつ行為等により懲戒処分等を受けた者」は205人であり、調査開始以降初めて200人を超過したとのことです(文部科学省Webサイト「平成25年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」教育職員の懲戒処分等(平成25年度)より)。
不祥事の中でも、児童生徒に対するわいせつ事案は、人生を左右しかねない多大かつ長期にわたる被害を与え続けるものであり、児童生徒や保護者からの信頼を大きく損ねる不祥事として、厳しく戒めるべきものと言えます。

 

2 わいせつ行為と罰則
(1)わいせつ行為の種類
教師の児童生徒に対するわいせつ行為の例としては、「服の上から胸や尻を触る」「太ももをなでる」「膝に手を置く」「抱きしめる」「教師の膝に座らせる」「キス」「下着の中に手を入れて胸や尻を触る」「服を脱がせる」「教師の下腹部を触らせる」「性行為」など、身体に対する直接的な行為のほか、「わいせつな画像や動画を撮影する」「盗撮」といった身体に直接触れない行為もあります。こうした行為は、行政上の処分対象となるばかりでなく、各種の法律、条例に基づき刑事責任を問われる場合もあります。

(2)罰則の例
例えば、児童生徒の下着に手を入れて胸を触った場合、強制わいせつ罪が適用される可能性があります。

・刑法第176条(強制わいせつ)
13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

 

生徒との性行為については児童福祉法、淫行条例に罰則があります。

・児童福祉法第34条第1項第六号
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
六 児童に淫行をさせる行為
・青少年の健全な育成に関する条例(東京都)第18条の6
何人も、青少年とみだらな性交又は性交渉類似行為を行ってはならない。

 

盗撮行為については、各自治体の迷惑防止条例、軽犯罪法、児童ポルノ法などに罰則規定があります。

 

3 わいせつ目的
今回の事例の男性教諭は、「腰痛を訴えて部活の練習を休んでいたため、テープを貼った。効果が分かるように撮影した」などと、わいせつ目的を否定しています。しかし、女子生徒を裸にしていること、男性教諭がテーピングする必要がないこと、当然ながら撮影の必要もないことなどの客観的事情からすれば、わいせつ目的があったと見るのが合理的判断です。男性教諭の言い分は到底認められるものではありません。

 

4 被害者の感情
わいせつ行為の被害者は、被害にあったことを誰にも相談できず悩み、加害教員が処罰されて問題が解決したように見えても、その後長年にわたり苦しむことがあります。他方、加害教員の動機を聞くと、「スキンシップだと思っていたが行き過ぎてしまった」「恋愛感情を抑えられなかった」「ストレス発散であった」など、まったく身勝手な軽い動機であるばかりでなく、教師という立場が何ら歯止めになっていない様子が伺えます。
教師や顧問という立場を利用した、児童生徒が被害者となるわいせつ事案は、不祥事の中でも最も許しがたいものの一つです。軽い気持ちからしたことが児童被害者の心に長きに渡る傷跡を残すことを、忘れないでいただきたいと思います。

 

【教育者の眼】

部活動指導の不祥事
その“根底”にあるものとは

濱本 一(共栄大学教授/前埼玉県教育局市町村支援部長)

 

■部活動の不祥事を引き起こす「支配・服従」の関係

今回の事例は、中学校の部活動における女子部員へのわいせつ行為です。不祥事に至る背景には、一体何があるのでしょうか。

部活動も教育活動の一環です。教師は「教える」「指導する」立場にあり、生徒は「教えられる」「指導される」立場にあります。当然のことですが、その根底には「人格形成」の理念がなければなりません。こうした認識がないと、顧問が自身を絶対的な権威者と考え、生徒を支配・服従させようと考えたり、部活動をストレスの解消の場にしようとしたりします。そうした認識・行為が、やがて体罰行為や本事例のようなわいせつ行為につながっていくのです。そこに、児童生徒の基本的人権を尊重する姿勢はまったく見られません。

多くの教育委員会が、「人間性豊かな教師」「教育に対する情熱と使命感を持つ教師」「幅広い教養と専門的な知識・技能を備えた教師」などの「求める教師像」を示しています。教員採用試験の面接等でもよく聞かれますが、教師を目指す人には、あらためてその意味を自覚してほしいと思います。

 

■ 求められるのは教師として「学び続ける」姿勢

教員は、教師としての自覚や使命感を深めるとともに、豊かな人間性や専門性等の向上を図るため、学び続けなければなりません。そして、「学び続ける」ために、「絶えず研修に励む」ことが求められています。「研修」は「研究」と「修養」を併せた言葉で、その意味をしっかりと咀嚼することが、不祥事を起こさないためにも必要です。

「研修」に関する法規には、以下のようなものがあります。

・教育基本法第9条
法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。

 

・教育公務員特例法
(研修)
第21条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。
(研修の機会)
第22条 教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
2 教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。
3 教育公務員は、任命権者の定めるところにより、現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる。

この他にも、教育公務員特例法第23条には初任者研修が、第24条には十年経験者研修が定められています。さらには、各教育委員会においても、キャリアの節目ごとに研修が設けられています。こうして法律的に見ても、教員は絶えず研修に励み、教員としての自覚、使命感、指導力、専門性を高め、信頼される教師を目指すことが求められているのです。

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