学校不祥事の顛末

休み時間中の女子児童2人にわいせつ行為

【今月の事例】
休み時間中の女子児童2人にわいせつ行為
A 県教育委員会は、女子児童にわいせつ行為をしたとして、B 市内の公立小学校の50 代の男性教諭を同日付で懲戒免職にしたと発表した。教諭は事実を認めているという。県教委によると、教諭は4~6月、勤務する小学校の教室で休み時間中に計6回、女子児童2人に体を触るなどのわいせつ行為をした。8月にB 市教委に匿名の電話があり発覚した。

 

【法律家の眼】

広がる公益通報窓口の設置
その制度的意義と活用方法

弁護士 樋口 千鶴(上條・鶴巻法律事務所/東京都教育委員会公益通報弁護士窓口)

 

1 不祥事発覚のきっかけ

この事例では、女子児童やその保護者が被害を直接、実名で申告したのではなく、市教委への匿名の電話により事実が発覚しています。今回は、こうした発覚の経緯に関連して、コンプライアンス強化の観点から設置されている「公益通報(内部通報)窓口」について解説します。

 

2 公益通報窓口とは?

度重なる企業不祥事により、コンプライアンスの重要性が広く認識されるにつれ、民間企業(特に大企業)では「内部告発を受け付けるための通報窓口」を設けるようになりました(実際の名称は「公益通報窓口」「内部通報ホットライン」などさまざまです)。こうした窓口では、法令違反行為などの「違法行為」だけではなく、「違法とまでは言えないが不適切な行為」まで、広く通報を受け付けているのが一般です。企業は、窓口が受け付けた通報事実について社内調査を実施し、問題があれば是正をし、窓口は調査結果を通報者にフィードバックします。

また、通報者の名前が特定されないよう匿名性を確保することも、こうした窓口の役割となっています。

 

3 教育現場の具体例

この事例では、市教委が通報を受け付けていますが、行政でも不祥事対策や行政の透明性確保などの観点から、同様の通報窓口を設置する動きが広がりを見せています。

例えば、東京都教育委員会は、教職員・児童生徒およびその保護者が、教職員の職務執行に関する法令違反等の不適正な行為の事実を認めたとき、教育委員会や学校から独立した弁護士を通して通報できる制度として、「公益通報弁護士窓口」を設けています(東京都教育委員会Web サイト参照)。

その他の自治体や私立学校でも、組織内部の窓口、あるいは組織外部の弁護士が担当する通報窓口を設置する例が見られます。

 

4 公益通報者保護法

不正行為を通報しようとするとき、通報者としてまず心配になるのは、「通報したことにより何か報復を受けるのではないか」という点でしょう。これについて、公益通報者保護法が明示的に「不利益取扱いの禁止」を定めています(同法第5条第1項)。

・公益通報者保護法第5条第1項
・・・事業者は、その使用し、又は使用していた公益通報者が・・・公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、降格、減給その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

5 不祥事に気付いたらどうするか?

言うまでもないことですが、教員として自らが不祥事を起こさないことは当然です。それでは、もし不祥事が起きたことを見聞きした場合、皆さんならどうしますか?

例えば、今回の事例になぞらえて言えば、同僚が女子児童の体を触るなどのわいせつ行為をしているのを見たらどうしますか? もし、それが自分の指導担当教諭だったらどうしますか? もし、それが管理職だったらどうしますか?

あり得ないことと思わず、万が一にもそのような事態に直面したらどうするか、一度真剣に考えてみてください。

ただし、答えは簡単です。保身を考えて不祥事を見過ごすことなどあり得ません。解決に向けて動く、見て見ぬふりはしないといった正義感を忘れないでください。

その場合、一人で悩まず、公益通報窓口に相談するという選択肢があることを、今から心に留めておいていただければと思います。

 

【教育者の眼】

教育法規の本質から見た
教師のわいせつ行為の問題点

濱本 一(共栄大学教授/前埼玉県教育局市町村支援部長)

 

今回の事例は、小学校における女子児童へのわいせつ行為です。わいせつ行為は性犯罪であり、ましてや子供の夢や希望を育み、人格形成を司る教育に携わる教師が行うことなど決してあってはならず、許されるものではありません。本事例のようなわいせつ行為が後を絶たない現状は、教育に携わる者にとって残念極まりないことです。

 

■ 教職とは何か

この問題と向き合うに当たって、改めて「教職とは何か」について考えてみてほしいと思います。 教職とは、児童生徒、学生を教育指導する職務。その「目的」については、法令上、次のように規定されています。

・教育基本法第1条
教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

 

上記の目的達成に向けて、教師が教育指導を行う上で、わいせつ行為など言語道断です。「人格の形成」どころか、子供の人生観、性格、対人関係などさまざまな面に猜疑心や恐怖心を植え付け、明るい未来、人生を踏みにじってしまいます。本人はもちろん、ご家族にとってもです。

 

■ 教師の職務

「教師」の職務については、次のような規定があります。

・日本国憲法第15条第2項
すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
・地方公務員法第30条(服務の根本基準)
すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。

教師は「全体の奉仕者」であり、子供たちや保護者、地域の方々にとって、社会人、大人としての範であり、手本でなければなりません。範である教師のわいせつ行為は教師という職責の信頼を失墜させることになります。

 

■ 教師の職務上の義務

教師には、「職務上の義務」と「身分上の義務」があり、地方公務員法に次の8つが示されています。

《職務上の義務》
・服務の宣誓(第31条)
・ 法令等及び上司の職務上の命令に従う義務(第32条)
・職務に専念する義務(第35条)・信用失墜行為の禁止(第33条)
・秘密を守る義務(第34条)
・政治的行為の制限(第36条)
・争議行為等の禁止(第37条)
・営利企業等の従事制限(第38条)

わいせつ行為に関しては、他の教職員の信頼を著しく失う行為であり、上記の中では「信用失墜行為の禁止」に抵触します。その内容・度合を考えても、懲戒免職の厳罰に処されることは当然でしょう。

次号では、重大な罪であることが分かっていながら、なぜわいせつ行為に陥ってしまうのかを考えてみます。

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