Professional の仕事

第4回 学校司書 米澤 久美子 さん

教育活動に関わるのは教師だけと思っていませんか?学校は実にさまざまな人たちの支えによって成り立っているのです。「チーム学校」の一員として子供たちの健やかな学びを支える人々に、話を伺いました。

文・黒澤 真紀

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米澤 久美子(よねざわ・くみこ)さん
大学の文献情報学科で図書館情報学を学び、司書の資格を取得。卒業後は民間企業で著作権関係の仕事に携わる。3年後、図書館に携わる仕事がしたいとの初心に立ち返り、東京都の採用試験を受け、学校司書としての正規採用が決まる。以降、現任校の府中東高校まで、定時制高校など7校に勤務。多くの生徒や教員を学校司書の立場からサポートし続けている。

 

―米澤さんが学校司書になられた動機と経緯を教えてください。

子供の頃から本が好きだったんです。小学生のときは図書館の端から端まで、片っ端から本を読み尽くしました。中高校生のときは少し背伸びをして難しい本にも挑戦しました。今のように児童用図書が充実していませんでしたので、『罪と罰』のような大人向けの小説も読んでいましたね。内容が難しくて頭を抱えることもありましたが、そうした経験を通じて、読書をする土壌のようなものが培えたような気がします。

大学では図書館情報学を専攻し、卒業後は民間企業に就職して、著作権関係の仕事をしていました。仕事には日々充実感を覚えていたのですが、次第に「図書館に携わる仕事がしたい」という思いがふつふつと湧いてきたんです。そこで東京都の採用試験(司書分野)を受験し、正規採用が決まりました。その後は定期的な異動があり、現任の府中東高校が7校目になります。

 

―学校司書という仕事ですが、司書教諭とはどのように異なるのでしょうか?

まず「司書」とは、図書館法が定める図書館の専門職員ことで、仕事の内容は図書館を利用する人の相談に乗ったり、利用者が本を探しやすくするための環境を整えたりといったものです。その中で、学校に配属された人のことを「学校司書」と言います。一方の「司書教諭」は、各学校で資格を持った教員に発令がされていますが、兼任のため、クラス担任を持っているケースがほとんどです。そうなると、教科指導や学級経営、生徒指導などで手一杯になってしまい、学校図書館の仕事に割ける時間は限られてしまいます。これまでに私が赴任した学校も、学校図書館の仕事は、学校司書が担っているのが実情です。

 

―学校司書になるために必要な資格や条件はあるのでしょうか?

基礎となる資格は「司書」だと思います。私は司書の資格のほかに、社会教育主事の資格も持っています。近年は正規採用が狭き門になっていて、資格を持っていても正規採用に至らず、非常勤で勤務している人が少なくありません。今後は司書資格を持った人の正規採用が増え、司書の仕事で生計を立てられるような環境が整えばいいなと思っています。

 

―どんなタイプの人が、学校司書向きですか?

何事も臨機応変に対応できる力が求められるのではないかと思います。仕事に対する確かな専門性だけでなく、児童生徒や教員の要望等に柔軟に対応できる力を持ち合わせている必要があると思います。

 

―学校司書の具体的な仕事内容について教えてください。

学校司書の仕事は大きく分けて2つあります。「生徒のための仕事」と「教員のための仕事」です。先日、ある女子生徒が「先生、私、本を読んだことがないから何か面白そうな本を教えて!」と言ってきました。ここは学校司書の腕の見せ所です。「任せて!」と5~6冊の本をズラリと彼女の前に並べました。すると、そのうち何冊かに興味を示し、最終的に「この本を読んでみたい!」と映画の原作にもなった本を選んでいきました。このように、生徒からの突然の相談にも、機転を利かせて対応するのが、学校司書の日々の仕事です。

201512P127図書の貸出作業をする米澤さん。学校という“チームの一員”であることを意識しながら、日々の仕事に向き合っていると言います。

一方、教員が本を借りにくることも多いので、その対応も学校司書の大切な仕事です。問題を解くのに必要な専門書を一緒に探したり、授業を組み立てる上で本に関する相談を受けたりすることもあります。例えば、あるテーマを扱うときに押さえておくべき作家や文献は何か、それをどのようなタイミングで授業に盛り込んでいくかなどについて、学校司書の視点からアドバイスをしています。

 

―学校司書の1 日、1 年間のスケジュールはどのような感じなのでしょうか?

毎朝、職員室での全体ミーティングに参加した後、すぐに図書館の開館準備に取り掛かります。空き時間のある高校3年生は、開館してすぐにやって来ます。そこから17 時に閉館するまではあっという間で、新着本の整理をしたり、生徒や教員に対応したり、館内の環境整備をしたりしています。

年間スケジュールは、基本的には学校の年間行事予定と対応しています。4月には新入生を対象にした図書館のオリエンテーションを行いますし、今年度は9月の文化祭で「古本市」も開催しました。図書委員会の生徒たちの「何かやってみたい!」との声がきっかけとなった催しでしたが、当日は500 人ほどの人が足を運び、約200 冊を売り上げることができました。

 

―仕事上、何か心掛けていることはありますか?

「学校」というチームの一員として、役割を果たすことでしょうか。一翼を担う学校司書として、責任を持って生徒たちの教育に当たらねばと思っています。本の紹介をはじめ、本を介して教えるだけでなく、委員会活動を通じた役割分担や書籍貸し出しの守秘義務などを含め、学校司書が生徒に伝えなければならないことはたくさんあると思います。

 

―学校司書の仕事の醍醐味は、どんなところにあると感じていますか?

やはり、小さな喜びの積み重ねでしょうか。「先生、この本を探してたの!」という生徒の笑顔、「おかげさまでいい授業ができました」という先生方からの言葉。学校司書は“縁の下の力持ち”ですから、そうした言葉をかけてもらうと喜びを感じます。

学校や生徒に、新しい何かを提案できたときも嬉しいですね。この学校に赴任した当初、英語に苦手意識を持っている生徒が多かったので「英語多読(イギリスの幼児向け教科書)の導入をしたらどうか」と英語の教員に提案しました。その結果、総合的な学習の時間で英語の多読を取り入れるようになりました。英語が苦手だった生徒から「英語の本に興味が出てきた」との声を聞くと、学校司書として良い仕事ができたような気がします。

 

米澤さんのある1 日
8:30 出勤
職員室で打ち合わせ/図書館開館の準備/新聞の用意、パソコンのセッティング/朝から自習にくる高校3年生への対応/本の返却対応/図書館で授業を使う場合はその準備/納品された本の整理/新着データの確認/先生方との授業の打ち合わせ/図書委員との打ち合わせ/館内の掲示やコーナーづくり/閉館準備
17:00 図書館閉館
17:30 ~ 18:00 退校
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