教師の本棚

『サラバ!』

201511P131

西 加奈子=著
2014年/小学館
上巻 ¥1,600+税/下巻 ¥1,600+税

 

有意義なモヤモヤ感が体験できる一冊

遠江 久美子(東京都町田市立鶴川第二中学校教諭)

読書好きの私が最も困るのが、読書後にモヤモヤ感が残る本との出会いです。その中の1冊が、最近読んだ『サラバ!』。モヤモヤは、作者の西加奈子氏が何を言いたかったのか、主人公の未来はどうなるのか、サラバの意味は何なのかが判然としないからで、いまだにこの本と対峙している私がいます。

『サラバ!』は、少年時代は容姿にも恵まれ、卒なく生きてきた圷歩(あくつあゆむ)が次第に行き詰まりを感じて苦しみながら、やがて37 歳になるまでの半生を描いた物語です。上巻ではエジプト人のヤコブとの友情が描かれ、下巻では震災や身近な人達との死別や別離が訪れるなど、とにかく壮絶な人生に圧倒されます。歩は行動奇異な姉を憎み、家族はバラバラになりますが、その姉に家族が救われるラストは圧巻。生き方は違っていても、どの人物からも“自分が信じるものを自分で見つける”という魂が感じられます。

教師は、少なからず児童生徒の人生を預かる大きな仕事です。周囲の環境や人の気持ちがさまざまに変化してゆく中で、教師として変えてはならない“自分が信じるもの”を自分で見つけ、持つべきだと私は思っています。私のそれは、“生徒の心を育てる種をまくこと”です。

以前、こんな事がありました。私のクラスのK 君が、中学に入学して2カ月後にアメリカへ転校することになったときのこと、私はクラスに一つの種をまきました。“彼が登校する最後の日となる運動会。そこでの優勝を彼へのプレゼントにしよう”と。生徒たちが、K 君のためにと必死で頑張る姿は、大きな友情の花を咲かせました。時にはまいた種の芽が出なかったり、芽が出ても枯れてしまったりすることもあります。それでも私は、これからもせっせと種をまき続けるつもりです。

さて、「私の“サラバ”は何だろう?」と、ずっと考えていました。答えは“今の私”です。常に今だけにこだわらない自分でいたい、“今の私”に常に「サラバ」と言える自分でありたいと思いました。

あなたも『サラバ!』を読んで、モヤモヤ感を体験してみませんか?

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