映画・ドラマに学ぶ教育の本質

「おばあちゃんの家」

201511P130

2002年/韓国/87分
監督・脚本:イ・ジョンヒャン
キャスト:キム・ウルブン/ユ・スンホ/ミン・ギョンブン/イム・ウンギョン/
トン・ヒョフィ 他
Blu-ray & DVD 発売中
発売元:ツイン
販売元:パラマウント ジャパン

 

無条件の愛とは何かを考えさせられる名作

吉田 和夫(玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表/元東京都公立中学校長)

この映画を観た後の感想は不思議です。多分、複雑な心境になることでしょう。他の映画のようにワクワクすることも、見て楽しいと思うこともありませんが、どこか懐かしい思いで心が満たされることでしょう。

汽車とバスを乗り継ぎ、埃が舞う田舎道へ。スーツケースを引きながら母親と7歳の息子サンウ(ユ・スンホ)が人里離れた田舎に住むおばあちゃん(キム・ウルブン)を訪ねます。母親の仕事探しのためおばあちゃんに預けられるのですが、サンウは典型的な都会の子。加えてわがままで自分勝手。来るときも母親の言うことを聞かず、ゲームで遊び続けるような“悪ガキ”です。だから、おばあちゃんとサンウの生活も推して知るべし。しかも、おばあちゃんは耳が不自由で、しゃべることも字を書くこともできません。家も貧しく、自給自足の一人暮らしです。

そんなおばあちゃんをあざ笑い、ことごとく軽蔑するサンウの姿に、観ている方もうんざりします(このような子供は日本にもいるでしょう。ひょっとすると皆さんが受け持つクラスの中にもいるかもしれません)。でも、このおばあちゃんは決して怒らず、いつもニコニコと孫のサンウを見守ります(人が良すぎるぜ!と思わずつぶやくこと請け合いです)。おばあちゃんの態度を見て、サンウのわがままは、さらにエスカレートします。

テレビゲームとゲームマシン三昧で生きてきたサンウにとって、電池も売ってない田舎の貧しい家、四方が石だらけの庭、真っ暗な便所は、人生最初の試練となります。典型的な都会っ子として、田舎を心から軽蔑するサンウは欲求不満をおばあちゃんにぶつけるのです。一緒に過ごす時間が長くなるほど、サンウがおばあちゃんを困らせることも増えます。しかし、次第にそんな田舎の生活にも慣れ始め、同じ年頃の友達やほのかに憧れる女の子との出会いにより、7歳の少年と77 歳のおばあちゃんの同居は少しずつ変化していきます。

韓国の映画ですが、日本の原風景にも近い山奥の景色が心に染みます。今は失われた(多分、韓国でもそうでしょう)古き良き村の生活や人の素朴さ、人と人とのつながりなど、いろいろと考えさせてくれる映画です。

この映画、実はあまり予算をかけていません。イ・ジョンヒャン監督が、自身が母方の祖母から受けた無条件の愛情に感謝の気持ちを表現するために、この映画を作ったとのことです。選ばれた韓国中部のロケ地の村、そこで出会った腰の曲がった77 歳の老婆、出演する村の人々、そしてCM 出演しか経験のなかった7歳の男の子。偶然の出会いと巡り合わせにより、韓国映画史上歴代7位を記録する大ヒット映画が誕生したのです。

人を優しくするのは、人への愛情でしかないということを改めて感じさせる映画です。

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